足立朝日

大衆芸術家・NPO「大衆芸術開拓組合」代表 多賀 もちゆき さん(53) 興野在住

掲載:2018年4月5日号
「好き」を追求し続ける

 鹿浜の「こども食堂 いちか」で子どもたちに絵を教えている。伸び伸びと自由に絵を楽しむのを見守るのがスタンスだ。「『ウンコ描いてもいい?』と聞かれて、『いいよ。うまく描けたら将来医学書が描けるよ』と答えている」という。
 「オタクです」と公言して憚らない。子どもたちの表現を縛らないのは、好きなことを突き詰める体現者だからこそだろう。
「怪獣がなかったら生きていなかった」というほどの筋金入り。ウルトラマンや仮面ライダーなどの変身ヒーロー番組が、夜7時台にテレビ放送されていた特撮黄金時代に生まれ育った。子どもはみんな夢中になったが、「それが大人になっても治らなかった」と笑う。
 親からは、マンガとプラモばかりと叱られたが、「怪獣作品の監督になりたい」と日本映画大学の前身、横浜放送映画専門学院でウッチャンナンチャンらと共に学んだ。
 絵、模型、粘土作りなど、表現の幅は広がった。「絵を描くのは、怪獣を我が物にするため」。好きなものへの情熱に尽きる。
 極めた技を生かして、映画「ゴジラ」やテレビの特撮の装置製作など、裏方として活動。出版関係では、有名な科学雑誌の構成・執筆から、特撮のムック本、アニメ名言集などオタク系のものまで様々。人気の恐竜図鑑は、イラストから模型まで全て一人で手がけた。
 現在はデイサービスやカルチャー教室などで、紙粘土を使った恐竜工作やえんぴつアート指導など、人々の生活に密着した芸術活動を続けている。
 今年1月、仲間とともに「大衆芸術開拓組合」としてNPO活動支援センターに登録。コミュニティの健全な維持・発展を目的に、公共施設、町内会、商店街のイベントなどで、工作教室の先生やおもちゃのお医者さんとして、メンバーの得意分野のスキルを提供している。
 「いろいろなところに行きたい。多くの人が笑って暮らすために。絶望的な気分になるのは、金がないことではなく、明日生きていても面白いことがない時だから」。作る楽しさ、夢中になる喜びこそが、人生に大切なのだとの信念が伝わる。
 「今でも特撮映画でアカデミー賞が夢」。柔らかな笑顔に嘘はない。
【連絡先】工作教室などの依頼はTEL090・1737・6854多賀さんまで。

写真下/多賀さんが手掛けた本