足立朝日

NPO法人「ふるさと学舎」専務理事 荒昌二郎さん(58歳)

掲載:2005年10月5日号
NPO法人
「ふるさと学舎」専務理事
荒 昌二郎さん(58歳)
花畑六丁目在住

 足立区は文化人の宝庫。その英知と豊富な経験を結集し、行政や地域住民との協働で、日本文化を語れる人材育成と文化の香る地域づくりを目的として03年に設立されたNPO法人「ふるさと学舎」(梅田七丁目)の活動が注目を浴びている。能楽・能面・三曲・日舞・民謡・吟剣・茶道・華道・盆栽・相撲甚句・作法などを、学校、町会、医療・養護施設などのイベントに事業提供。大熊蘆蔭氏(文化団体連合会会長)が理事長を務め、設立当時から共に奔走する1人に、専務理事の荒昌二郎氏がいる。
  荒氏は、三味線・民謡師匠で能面師。47年に福島県浪江町に生まれ、民謡師匠であったひいおばあさんの歌声を子守唄に育った。生活の中に民謡がある環境で、荒氏も自然に民謡と三味線を
体得。東京で就職後、日本民謡協会会員となり、02年まで公認助教授を務めた。同年に退会後、日本伝統文化・芸能研究・企画集団「葦の会」を主宰。現在は、北惟二(きたこれつぐ)として教授の傍ら「さくら幻想」「津軽――魂の糸音」などの三味線演奏作品を発表。プロ演奏家を目指す鈴木孝尚君(西保木間小5年)らの育成にも力を入れる。
荒氏制作の能面の前で

荒氏制作の能面の前で

夫唱婦随の妻に支えられて 
荒氏が能面と巡り合ったのは42歳のころ。瞬間に「これだ!」という運命的な直感があった。48歳で能面師・田島満春氏に師事。00年に荒家・家伝號(ごう)「杢右衛門」を再興し、六代目を襲名。01年に「花玄会」を主宰し、創作能面「足立姫」の制作も開始。03年、足立姫伝説が残る「性翁寺」(扇二丁目)に奉納した。妻の通子(みちこ)さんによると、荒氏は製薬会社を50歳でキッパリと退社。バブル期をガムシャラに生きた荒氏の中には「子どもたちが一人前になったら能面制作三昧の生活を」という夢があり、通子さんはそれを見守った。「能面に没頭する姿を見て、自分も一緒に創っている気持ち。達成感がある。孫も影響を受け、物づくりが上手」と目を細める。まさに夫唱婦随の人生観が能面師・杢右衛門を支え、さらに同氏の文化力が「ふるさと学舎」へ還元される。問合せ℡3886・6465法人本部。