足立朝日

足立区から未来のなでしこジャパン 足立LFC出身 山下杏也加選手 日テレ・ベレーザに入団

掲載:2014年6月5日号
 4年に1度の男子のサッカーW杯ブラジル大会が、いよいよ今月12日(木)に開幕する。男子に先駆け、日本女子代表なでしこジャパンが5月25日(日)のアジア杯決勝で、悲願の初優勝を果たした。その決勝ゴールを決めた岩清水梓選手と同じ日テレ・ベレーザに、今年、足立区から入団した選手がいる。青井在住の山下杏也加(GK)選手(18)だ。

 170㎝の長身。しっかりした体格に控えめで爽やかな笑顔には、つい数カ月前まで高校生だったとは思えない落ち着きがある。
 身体能力の高さと男子並みのキック力が評価され、昨年7月に日テレ・ベレーザの特別指定選手として加入。今年正式に入団し、第2GKとして研鑽を積んでいる。
 3月29日(土)の開幕戦(味スタ西競技場)で、出場停止の正GK・曽山加奈子選手に代わって出場、なでしこリーグデビューを果たした。「曽山さんが出られないプレッシャーもあって、死ぬ気で守ろうと思って出た」。スタメンでフル出場。エルフェン埼玉に1失点したが、5対1でデビュー戦を勝利で飾った。
◆FWからGKへ
 山下選手がサッカーを始めたのは、青井小2年の時。水泳を習っていたが、「兄の練習が楽しそうだったので」、KSC加平サッカースポーツ少年団に入団。たちまちサッカーの魅力にはまった。
 当時はFW。練習も苦にならず、「点を決めて勝つことが楽しくて。ずっと笑っていたと思う」。その後、小学生女子チーム・東加平キッカーズを経て、青井中学校時代に足立LFC(レディースフットボールクラブ)で活躍。リーグ3部で優勝し、チームを2部に押し上げた。
 高校は憧れのなでしこジャパンの丸山桂里奈選手(FW/大阪)の出身校、村田女子高校に進学。長身を買われてGKに転向した。フィールドプレーヤー希望で一旦は断ったが、「代表にしてやると言われて、信じてみることにした」。
 3年生の昨年、U19日本女子代表としてアメリカと中国に遠征。外国人選手との体格の違いなどを学ぶ機会に恵まれた。今年2月には、なでしこジャパン予備軍「なでしこチャレンジ」に選ばれ、キャンプに参加した。
◆壁を乗り越えて
 意外にも中学でやめようと思っていたという。「自分からサッカーを引いたら何も残らないと思い、続けることにした」。決意で進んだ高校で、勉強との両立が出来ず投げ出そうとしたことも。「今やめたら将来どうするんだ」「オリンピックに応援に行くから」。友人や周囲の励ましと期待が支えた。
「期待を裏切らないようにしよう」
 ベレーザに入った直後は、高校サッカーとの違いに戸惑った。「スピード、判断、アイデア、タイミングも違うし、慣れるまで大変だった」
 もう一つ、苦労したことがある。
 GKはチームの中で唯一、全体を見渡し試合の流れを客観的に見られるポジションにある。守備だけでなく、フィールドの選手たちに大声で指示を出すのも重要な役目だ。
 実は山下選手、人見知りが激しく、喋るのが苦手。「GKになった時は何喋っていいかわからなくて。キーパーコーチに声、声、と何度も言われて。今は少しずつですけど出せるようになりました」
 苦手だったという笑顔は、自然でてらいがなく、信頼できる芯の強さが感じられる。周囲のアドバイスを柔軟に受け入れ吸収する。前向きに自分を変えていくしなやかさが、成長の秘訣なのだろう。
 今後の抱負を訊いた。
「チームとしては、優勝してタイトルをいくつも獲りたい。自分は、試合に出て、チームに貢献して山根恵里奈選手(日本代表GK)を超せるようにしたい」
 今も時々足立LFCに顔を出す。秋本雅信代表曰く「男前」な山下選手は後輩の憧れの的だ。「一緒にサッカーできるように、一緒に頑張りましょう。今つらくてもその壁を乗り越えればメンタル的にも強くなると思うので。諦めずに全力で頑張ってください」
 最後に足立区の皆さんに。「みんなに感動と女子サッカーの素晴らしさを伝えられるように頑張るので、是非、足を運んで応援してください」
 なでしこジャパンで勇姿が見られる日を楽しみにしたい。
【足立区出身の女子選手】女子フットサル日本代表=小出夏美選手(元鹿浜レグルス、VEEX TOKYO LADERS所属)、石鍋千夏選手(元KSC加平、FOREST ANNEX所属)

写真上/山下杏也加選手=東京ヴェルディのクラブハウスで
下/(C)TOKYO VERDY