足立朝日

足立の歴史を子どもたちに 「お化け煙突」の絵本が完成 千住文化普及会

掲載:2015年5月5日号
 絵本「ぼくたちのおばけえんとつ」が完成し、4月11日(土)、シアター1010視聴覚室で発表会が開かれた。
 NPO法人千住文化普及会(櫟原文夫理事長)が、公益信託あだちまちづくりトラストの助成を受けて制作したもので、2013年の絵本「槍かけの松」に続く第2弾。
 「お化け煙突」とは1963年(昭和39)まで千住桜木にあった千住火力発電所の煙突のこと。84mもの高さがあり、見る角度によって4本が1~3本に見えたことなどからこのように呼ばれた。絵本の中では子どもたちが、電車などで移動しながら本数の違う煙突風景を見つけていく。
 文章は櫟原代表が執筆し、都立足立新田高校3年(制作当時)の中尾里穂さんが絵を担当。児童文学作家の岩崎京子氏と「日本手作り絵本ネットワーク」の青木珠代代表の監修を経て出来上がった。
 美術部だった中尾さんは3年の夏休み、作画の依頼に名乗りを上げた。風景画はあまり描いたことがなく苦労したが、特に大変だったのが電車の車内で、「今の電車と違うので、貸してもらった資料を見て描きました」。
 また、少年が煙突に登って怒られる場面があるが、千文会会員の鷲見竹由さん(70)の実体験だそうで、「30mぐらいまで何回も登った。上に鳥の巣もあった」と当時を振り返る。
 千文会は「子どもたちが地域に誇りを持てるように」と千住の歴史と文化を伝える活動を続けており、小学校での出前授業などでも語ってきた。櫟原理事長は「お化け煙突の話をすると、子どもたちから『そんなのがあったんだ』と歓声が上がった。高齢者、赤羽や高崎など千住以外の人にも、昭和のシンボルとして思い出になっている。絵本をツールに世代の交流の架け橋になれば」と話す。
 記念講演も行われ、元千住火力発電所所員の格和宏典さんが「お化け煙突のせかい」のテーマで、構造と仕組みなどを詳細に説明。参加者たちは貴重な話に熱心に耳を傾けていた。
 絵本「ぼくたちのおばけえんとつ」は1100円(税別)。問合せはTEL3881・3232千住文化普及会まで。
【メモ=お化け煙突】解体後、煙突の一部が滑り台として旧元宿小学校に設置。現在は同小跡地に建つ帝京科学大学の敷地の一角にモニュメントとして残る。隅田川の遊歩道沿いにあるので、一般の人も見ることが出来る。

写真上/作画を担当した中尾さん(左)と櫟原理事長=シアター1010視聴覚室で
下/絵本の1ページ