足立朝日

落語家 林家 なな子 さん(34) 六町在住

掲載:2016年1月5日号
林家正蔵に惚れ込んで

 落語家・林家正蔵の初の女性弟子は、二ツ目「林家なな子」。加平小学校・青井中学校・淵江高校出身で、現在も足立区に住む生粋の足立っ子である。大学卒業後、企業の営業として順調な人生を送っていたなな子が、落語家へ転身したストーリーが実に面白い。
 日本の伝統芸能が大好きななな子は、その一環で「ナマの落語を聞きたい」と考えて寄席へ。「うちの師匠が袖から華やかに出て来て、お花畑にぱあ~っと花が咲いたようでした。もちろん客席もわぁ~っと沸いて、私までうれしくなってしまいました。『この人の弟子になりたい! 落語をやりたいというよりもこの人に何かを教えてもらいたい!』という思いが湧きあがり、他の落語家さんの噺も聞きにいったけれど、やはり違う。うちの師匠の時だけ、感じた思いであることを再確認しました。仮に師匠が落語家ではなくて、俳優やミュージシャンであっても、私はこの師匠に弟子入りをお願いしたと思う。師匠が浅草演芸ホールの出番を終えたころを狙って表で待ち、師匠が車に乗りかけたところ勇気を出して窓をコンコン。師匠は不審者を見る目つきで怯えた様子。結局、女性の弟子は取らない主義で、当然私も断られ、でも諦めきれなくて師匠の出演する寄席に通い詰めました。段々、不審者を見る目は柔らかくなったけれど、師匠の気持ちは変わらず、『外で断るのは申し訳ないので、一度家に来なさい』と言われご自宅へ。師匠はお留守でしたが、大女将(海老名香葉子)と女将と対面。思いを真っ直ぐにぶつけたところ、お二人が親身に話を聴いてくださり、2010年8月1日に晴れて入門できました!」
 温かくも厳しい前座修行を乗り越えて、昨年5月に二ツ目昇進。なな子は長身であるが、舞台に乗った姿は輪をかけて大きく、ハスキー気味で迫力ある声が噺に安定感をもたらしている。媚のない男前の気質が相まって、観客にご隠居さんや八っつぁん・熊さんの世界を心地よく豊かにイメージさせる。近々の出番は次の通り。▼1月6日(水)13時「すがも巣ごもり寄席」(スタジオフォー)▼2月12日(金)19時「第3回大江戸戦隊ラクゴレンジャー」(余興出演/神田連雀亭)▼2月22日(月)19時「第四回松子会」(稲荷亭)▼2月28日(日)13時半「東の女×西の男」(神田連雀亭)
 足立区から新たなスターの誕生である。足立区の宝としてぜひ応援を!