足立朝日

「キデンキくん」の生みの親 グラフィックデザイナー 本舘 久美子 さん 柳原在住

掲載:2019年5月5日号
足立区は人がやさしい

 傘をかぶったまん丸な姿が愛らしい「キデンキくん」。北千住駅の東側、荒川に面した柳原のマスコットとして8年前に誕生した、地域の人気者だ。その生みの親が、本舘さん。
 モチーフは柳原に今も多く残る、レトロな傘付き裸電球の街灯「木電気」の妖精。町を盛り上げようと活動している柳原商栄会の小倉敏政事業部長の依頼でデザインしたもので、通称の「木電気」は小倉さんの長女が幼い頃に名付けた。
 他にも同商栄会から出される様々な企画を、形にしてきた。うちわやパンフレット、冊子などに留まらず、3年前に街路灯をLEDに変えた際には、木電気をイメージした電灯と電柱をデザイン。それまで電柱のフラッグは脚立に昇って付け替えていたが、ハンドル操作で上げ下げできる画期的なものが導入され、「商店会の人たちも高齢化していて落ちたら危ないので、本当に良かった」と心からうれしそうに話す。
 柳原に住んで約15年。吉祥寺で生まれ、フリーランスになってからの拠点は港区麻布台だったが、「絶対、足立区に住もうと思って」。
 きっかけは、社会人サークルでバスケをしていたことから、活動が盛んな足立区に自転車で通っていた時のこと。「足立区に入った途端、人がやさしくなるんですよ」。歩行者を優先して自転車を止めると必ず「ありがとう」と声をかけられる。ずれていた荷台の荷物を結び直してくれた人もいた。「他の区では一度もない。走っていると足立区に入ったことがわかります」
 実際に住んで、居心地の良さにさらに惚れ込んだ。「ボーっとできる荒川土手があって、下町情緒も銭湯も、ご飯を食べるところもいっぱいあって、都心にもすぐ出られる。全てがある。新宿にいても、早く帰りたいと思うくらい」。柳原は今やかけがえのない故郷だ。
 足立区浴場連合会の冊子「銭湯といえば足立」のデザインや、足立区シティプロモーション課の職員向けのデザインワークショップ講師も務めるなど、区の魅力を伝えるための仕事も多い。
「恩恵を受けるだけじゃなく足立区に恩返ししたい。私みたいに思う人が増えていけば、間違ったイメージが払拭できると思う」。街との両想いが、輝く笑顔の原動力となっている。