足立朝日

地域住民がつなぐ手 宅食でひとり親世帯を支援

掲載:2020年4月5日号
 新型コロナウイルスにより、特に大きな影響を受けているのがひとり親世帯だ。春休み前の全国一斉休校時には、一人で留守番する子どもたちの力になろうと、区内の様々な民間団体が宅食などで支援した。

◆あだちっ子見守りプロジェクト
 2月27日(木)の休校発表後、即座に立ち上げられたのが「あだちっ子見守りプロジェクト」。
 キッズパフォーマンス集団「ほしかぜ」をはじめ、企業、子ども食堂、学生らが一丸となって、区内の共働き世帯とひとり親世帯の小学1~3年生を対象に、春休みまでの2週間、支援活動を実施した。
 「ほしかぜ」は、代表のKAEDEさんがショーダンスと演劇の経験を生かし、梅島を拠点に5歳~12歳を対象にワークショップなどを行っているNPO。昨年4月の発足以来、「子どもはエネルギーの塊なので、それを放出する方法、人前で輝ける方法を見つけてあげたい」と、地域の子どもたちが気軽に芸術に触れられる場を提供してきた。
 突然の休校は10歳、8歳、1歳の三姉妹の母であるKAEDEさんにとっても一大事。仲間たちとすぐに対策を模索し、食事付きの居場所3カ所を設置。Ohanaダイニング(梅島3丁目)、ベジモア食育協会(千住旭町)でダンスやワークショップを実施。TERAKO‐YAプロジェクト(千住3丁目/株式会社オプティ)は1日塾体験を行った。いずれも区内感染者が出て3日間で中止されたが、最終日は帰りたくないと泣いた子もいたそうだ。
 その後は宅食での見守りに変更、ワタミ、2538キッチンデリコッペ(千住4丁目)、ウチワラベ(千住寿町)が無償提供した弁当を、3月27日(金)までの平日、仲間たちと手分けして届けた。
 届けるのは食事だけではなく、安心感だ。「一日中家に一人でいるという1年生や、パジャマのままの子もいた」。ほしかぜの子も同行し、同年代の顔を見て安心する児童や、子ども同士で文通が始まるなどの効果もあった。「一つの思いを持って集まったメンバーなので、夏休みなどに見守り場所作りを続けていけたら」とKAEDEさん。 
◆2538デリコッペ(千住4‐19‐16、TEL3870・5600)
 休校延長を受けて、新たに4月からGW明けまで、子育て世帯を対象に全品20%OFF(保険証提示)を始めた。富井真介店主は「こんな時なので明るい気持ちになってもらえれば」と話す。
◆足立区こども宅食事務局「あだち・わくわく便」
 代表は栗野泰成さん(29)。教育格差への取り組みとして幼児向け英語教育事業を立ち上げたが、必要な世帯への支援が届かないと実感。今年1月から宅食をスタートした。
 NPO法人「子育てパレット」、「あだち子ども食堂たべるば」、一般社団法人「Sowledge」が賛同。クラウドファンディングで資金調達し、協賛企業から保存のきく食品や、トイレットペーパーなどの生活必需品を確保。就学前~小学生のひとり親世帯を対象に、月1回無料で届けているが、休校を受けて3月は月2回に増やした。
 これまで28世帯が利用。重い物を上の階まで運んでもらえるだけでもありがたいと好評という。
 「利用者に取りに来てもらうフードパントリーは、人目を気にして来られない人もいる。そういう手の届かない部分をカバーできれば」と栗野さん。引きこもりの高校生がいる家庭もあり、「届けることで、そういう子が出てきてくれるようになれば意義のある活動になるのでは」とも。
 東京子ども子育て応援団(練馬区)と連携し、「いずれ、ネグレクトやDVなどによる見えない貧困の支援につなげていけたら」と話している。
※配送や仕分けのボランティアを募集中。あだち・わくわく便のホームページ、Facebookで。

写真上/「ほしかぜ」の子どもと一緒に弁当を届けるKAEDEさん(左)
中/わくわく便で届ける生活必需品を仕分けするスタッフ。調味料やトイレットペーパーもある
下/「わくわく便」で支援を始めた栗野さん