足立朝日

大黒湯の屋根 安養院に移築 クラファンで費用募る 6月末まで

掲載:2022年6月5日号
 2月に解体された千住の「大黒湯」の一部を移築保存しようと、クラウドファンディングが4月30日(土)から始まった。
 昭和4(1929)年創業の大黒湯は、昨年6月30日、惜しまれつつ92年の歴史に幕を下ろした。堂々たる宮造りの建物から「キングオブ銭湯」と称され、2年前にはカプセルトイのモデルにもなった。長年地域住民や全国の銭湯ファンから愛され、建物を有効活用できないかとの声も多かったが叶わなかった。
 そこで名乗りを上げたのが、千住最古の寺・安養院(千住5-17-9)の内藤良家住職だ。子どもの頃は友だちとよく大黒湯に行っていたという。
 「二度と造れない建物で、日本の貴重な文化財。なんとかできないものか」と考えていたある朝、読経中に唐破風屋根の安養院への移築を思いついた。解体が数日後に迫っていたが「会わずに諦めるのは悔しい」と大黒湯の店主に面会。一旦は断られたが、翌日、奇跡的に承諾が得られ、すぐに保存の手配に動いた。
 寺の玄関に移築されるのは、唐破風屋根と千鳥破風屋根。資材高騰もあり総費用は約2000万円かかる。それを知った「あだち銭湯文化普及会」が「歴史ある建物を守りたい。地域の新たな『拠りどころ』として、千住を盛り上げていきたい」と協力。300万円をクラウドファンディングで募ることになった。
 返礼品には、大黒湯の下足札や傘入れの札といった思い出の品、千住在住のハンコ作家・廣瀬十四三さんのグッズ、「家劇場」主宰・緒方綾乃さんがデザインした大黒様のキャラクターグッズなど、人々の力が結集。「キングオブ銭湯」の名づけ親で庶民文化研究家の町田忍さん、千住在住のイラストレーター・なかだえりさんも作品を提供した。
 安養院の門柱には、大黒湯の唐破風屋根移築の看板が設置されている。それを見て寺を訪れる人もいるそうで、「支援金もですが、皆さんが盛り上がってくれるのが素晴らしい」と内藤住職。
 「千住のまちの魅力は古い建物あってこそ」。人々の関心が高まることも期待する。
 移築のお披露目は秋の予定。その後は定期的にイベント等を実施し、地域の活性化につなげていきたいという。
【メモ】クラウドファンディング「日本の銭湯文化を遺したい!唐破風屋根保存プロジェクト!」は、「CAMPFIRE」のサイト内、「大黒湯」で検索。支援募集は6月末まで。

写真上/在りし日の大黒湯
下/移築のための工事が進む安養院で内藤住職