毎年12月3日~9日は障害者週間。平成16年6月の障害者基本法改正により、「国際障害者デー」の12月3日から、日本従来の「障害者の日」の12月9日までを定めたもので、障害者福祉への理解を広め、障害者の社会や文化等への積極的な参加意識を高めることを目的としている。足立区にも多くの障害者福祉関連施設があるが、社会参加を目指して取り組む、特徴的な2つを取材した。
一粒の麦
花畑4-34-16
tel 3884・8351
イタリアンレストラン「一粒の麦」
「いらっしゃいませー」。店員の明るい笑顔と、洒落た内装、おいしい食事やケーキは、普通のレストランや喫茶店と同様、一息つける午後のひとときを提供してくれる。
花畑4丁目の「一粒の麦」(医療法人財団・厚生協会)は、精神障害者通所授産施設としては珍しい、食堂事業を行っている区内唯一の施設だ。
長く入院していた障害者の自炊をサポートしようと、平成16年3月にオープン。工賃は時給500円だが、現在21人が社会への一歩として、生き生きと働いている。
通りに面した「イタリアンレストラン」「併設の食堂」「店頭でのパンやクッキーの販売」「配食サービス」を展開。通所者は職員らのサポートで栄養士やシェフと一緒に調理、販売、接客、清掃などを担当している。
レストラン接客の三田香織さん(26)は「自分が決めた週3回が達成できたら充実感がある。もっとステップアップして社会復帰したい」、開所当時から通う大谷浩平さん(40代)は「お互いに相談に乗ったり助け合える」と、充実を語る。明るい環境に、「昔の友達や親を呼べる」と喜んでいる人もいるそうだ。
一方で、なかなか安定して通うのが難しい現実もある。吉島徹施設長は「4年かかって次のステップを考えられる人もいる」と話す。不安定さをカバーし、可能性を引き出せる作業プログラムを常に模索し取り組む。
ボリュームたっぷり「一粒の麦セット」
○魅力のメニュー
美味しくてボリュームもあってこの安さは、なかなか他のお店には真似できない魅力だ。
一粒の麦セット1200円(アンティパスト、プチパン、ミニサラダ、パスタ、デザート盛り合わせ)は、食べ応え満点。昼休みセットやカレーライスセット(1000円。単品有り)、お楽しみ弁当800円なども。4名から要予約のパーティー料理(2600円)もある。
【営業時間】水~金曜11時半~15時、土曜11時半~16時。※祝日休み。
★12月25日(木)・26日(金)は、1年で2日だけのディナータイム。3900円のコースメニューのみ。2名から予約可。
【交通】竹ノ塚~花畑団地行きバス「団地入口」前tel5242・8807、
tel3884・8351
◆日替わり定食屋
家庭の味を提供。麺、丼、カレーライス、定食の4種。600円。
【営業時間】月~土曜11時半~14時、17~18時。
◆パンとクッキーの販売
パンはしっとりしていて懐かしい味と大好評。人気の「焼きカレーパン」は、揚げていないので低カロリー。焼きたてパンが15~20種類がある。
クッキーは始めて半年の松村純子さん(25)が仕込む。「つきことけんじ」というクッキーには、羽金月子さんのあたたかいストーリーも。
パン製造担当の須賀光明さん(40代)は「お客さんに喜んでもらえるのがうれしい」。接客が好きな下嶋賢司さん(40)が季節問わずレストラン入口外で販売している。【販売日】火・金曜11時~14時。
生地から丁寧にパンを作る
大谷田就労支援センター
大谷田1―44―3
tel3605・6762 FAX3605・7037
http://www.ooyata.com/
ぎっしりと並んだパソコンに向かい、黙々と作業する部屋の空気は、からりと明るい。
身体障害者通所授産施設の大谷田就労支援センター(萩原邦夫センター長)は、平成14年2月に開設。足立区が設置、社会福祉法人あいのわ福祉会が運営する。
障害の程度に合わせて、小さな部品の選別や、中古品用の放置自転車を磨く仕事など様々な作業があり、28人が働く。最近は脳血管障害などによる、中途障害者が増えているという。軽度であっても、一般企業への就職が困難という現状もある。
パソコン部門は上半身に障害のある人も働いていているため、マウスの代わりとなる専用器具や誤入力を防ぐキーガードなど、個々にセッティングされたものを使用。
各人の技能に合わせ、WebデザインやHP製作、データ入力、名刺や広報誌の制作などの仕事をしている。納期によっては残業することも。工賃は最初は月3000円、スキルアップ次第で6万円以上になるという。
最年少の山本あゆみさん(22)は手足が動かせず、口にくわえた棒を使いキーボードで入力。肩が凝る大変な作業だが、「仕事ができるのはうれしい」と笑顔が明るい。
障害の特性に合わせてスキルアップするには継続した仕事が必要で、データ入力や社内報など、コンスタンスに仕事が欲しいという課題がある。
職員の末吉正和さんは、「何ができるかより、何かしたい、働きたい、という気持ちが大事。重度の障害者でもこういった形の働き方ができると、知ってほしい」と話す。
◆年賀状印刷・受付中
文具店などに引けを取らないものが、カラー30枚2100円(墨1色1580円)~という安さでできる。宛名印刷も別途料金で可能。この機会にいかが? 注文は電話かFAX、HPから。
口にくわえた棒で1つ1つ入力する山本さん