足立朝日

千住矢立茶屋  歴史ファンが集う探訪の道先案内所

掲載:2010年4月5日号
 ゲームや漫画などから火が付き、今や老若男女問わず歴史ブームが起きている。そして、足立区の歴史といえば松尾芭蕉が有名。その芭蕉にちなんだ“休憩処”が千住河原町にある「千住矢立茶屋」。1周年を迎え、歴史好きの人たちからますます注目を集めている。
 旧日光街道と墨堤通りの交差点にある千住宿お休み処&ギャラリー・千住矢立(やたて)茶屋(千住河原町29‐5)が1周年を迎えた。
 茶屋を運営するのは、ビルを所有する出口信子さん。一緒に各地の史跡を巡っているNPO法人千住文化普及会の櫟原(いちはら)文夫代表から、「旅人の案内所兼お休み処になる場所を、千住にも欲しい」と相談を持ち掛けられたのがきっかけだった。
千住宿の歴史を求めて訪れる人に、やっちゃば(足立市場)や千住ねぎをせっかく紹介しても、食べられる店がない。どうせなら歴史を感じながら食事をしてもらえればと一念発起して、文化普及会のギャラリーとして貸していた「遊学庵」を茶屋に衣替えした。
名前の「矢立」は、筆と墨壺を組み合わせた携帯用の筆記用具のこと。松尾芭蕉が千住で矢立初めの句「行く春や鳥啼魚の目は泪」を詠んで奥の細道に旅立った旧暦3月27日(新暦5月16日)にちなんで、昨年の3月27日に開店した。
店内には芭蕉を中心とした千住の歴史資料を展示。歴史に想いを馳せながら、名物の千住ねぎを使った「千寿ねぎうどん」(650円)が食べられる。ねぎを安く卸してくれる業者の協力あってこその値段で、散策してひと休みするのにピッタリと好評。この他、芭蕉ゆかりの伊賀のお土産なども販売している。
  3月には文化普及会主催で、近くに住んでいた龍馬の許婚・千葉佐那の資料展を開催。龍馬が佐那について記した姉宛ての手紙の複製(北海道坂本龍馬記念館所蔵)も展示された。出口さん自ら北海道に出向いて掛け合った熱意が実った。
 訪れるのは、年配客ばかりではない。最近話題の歴史好きの若い女性「歴女(れきじょ)」の憩いの場にもなっている。
 近くに住む泉沢まり子さん(40)もその一人。入り浸って歴史の話で盛り上がる。佐那展には夫の達浩さん(36)、その妹の亜紀子さん、区外在住の友人2人と訪れた。世田谷から千住に越してきて6年だが、「知れば知るほど歴史がいっぱいあって面白い」という。地元民の達浩さんも「歴史は好きだったけど、石碑とか整備されていなくてピンとこなかった。それがこうしていろいろできてくると、凄いところに住んでいるなと楽しくなってくる」と話す。
 次々に大学が開学し変化し続ける千住の街で、古いものを伝える動きが着実に根付きつつある。
 営業時間は午前9時~午後5時、水・木曜定休。TEL3882・0451


写真=上/全国から訪れた人が立ち寄る千住矢立茶屋
下/名物の千住ねぎを使った人気の千寿ねぎうどん