足立朝日

Vol.95 劇団四季ミュージカル「嵐の中の子どもたち」 竹内一樹/川島創(つくる)

掲載:2010年7月5日号
群を抜く明瞭なセリフを全身全霊で

 18人の子どもたちが繰り広げる、友情と勇気がつまった冒険物語。劇団四季ミュージカル「嵐の中の子どもたち」――未来の劇団四季を担う若手俳優たちが、エネルギッシュに歌い、踊り、演じる一大スペクタクルだ。 舞台はハミングバード村の開拓記念日。大人たちは、喧嘩の絶えないケングループとボブグループ18人の子どもたちを残して式典に出かける。村に伝わる伝説の古代遺跡「エルドラド」を見つけたと言うボブ(川島創)と、それを否定するケン(竹内一樹)。ボブの言葉の真偽を確かめるため、子どもたちは山へ。遂にエルドラドを発見するが、外は暴風雨で村は壊滅状態。子どもたちは助け合いながら村を再建するが、仲間のひとりが高熱を出してしまう。彼らは仲間を救えるか?!
 お互いを受け入れ、心がひとつになった時に生まれる「友情の絆」は感動的だ。セリフの明瞭さに於いて他の追従を許さない劇団四季であるが、とりわけ同作品は群を抜いている。100%確実に聴き取れるセリフを全身全霊で紡ぐ、俳優一人ひとりの日本語が実に美しく、観客の心にストレートに響く。鈴木邦彦・作曲のテーマ曲「希望/すてきな仲間」と、蒸気を上げるミニ機関車の登場が舞台に華を添える。
 取材当日の観客は1300人の子どもたち(ニッセイ名作劇場)。幕開き瞬間の大歓声と大拍手の重みを、ケンを演じる竹内と、ボブを演じる川島は心に深く刻み込む。優等生役の竹内は、その優しげな風貌にも関わらず、やや攻撃的な言葉を発する必要があり、いかに正義感と愛をもってボブに言葉を投げかけるかを常に考えていると言う。自身が同劇団の「キャッツ」を観劇したことで四季を目指したように、この中にも自分たちの舞台を観て同じ道をたどる子どもたちがいるかもしれないと、背筋が伸びる思いだ。
 ボブを演じる川島は、喧嘩っぱやい不良グループのボス役。ボブの子ども時代をイメージして、苦労しながら役創りをする様子が、そのスリムボディから伺える。大学の演劇科で学び、四季の舞台に立つ意味を「人生をより豊かにする演劇の在り方」の探求に見出しているようだ。浅利慶太・企画/演出。浅利の根底にある「平和への思い」を引き継いだ俳優が、着実に育っている。
 上演日時=8月7日(土)午前11時、午後3時。場所=シアター1010。料金=大人5000円、小学生以下3000円。チケットTEL5244・1011

写真=ケン(左/竹内一樹)とボブ(川島創)
取材協力=日生劇場