
高校演劇関東ブロックの都県代表8校が参加するもので、同劇場では3年目。過去2年は区内代表中学1校が特別出演していたが、今年は有志による「足立区立中学校選抜」を結成。7校から集まった27人が参加した。
足立区は区立中学37校中14校に演劇部があるが、シアター1010の舞台に立つ機会は皆無に近い。同劇場での最後のサマフェスにあたり、区立中学校教育研究会演劇部会の横山淳子部長(東綾瀬中)が、「いろいろな学校に経験させたい」と選抜を呼び掛けた。
演目は「夕鶴」を題材にした「泥鶴」(作/辰嶋幸夫)。助けてくれた人間の男に恋した鶴・どろが、柳の妖怪の力で人間になり、婚約者を殺して男を手に入れようとする物語だ。幕が開くなり展開する情念の世界に、客席からは感嘆の声も。
4月に結成、本格的な稽古は夏休みから。初対面の他校の生徒たちとの共同作業は困難も多かったが、高校生の観客を前に、堂々と演じ切った。
隊長で主役のどろを演じた田中智恵さん(東綾瀬中3年)は「仲良くなるには時間がかかったし、先生たちも違うので緊張したが、このメンバーでやって良かった」と充実感を語る。副隊長の内藤詩織さん(第十四中3年)は「友達同士のごたごたもあって大変だったが、最後はみんな仲良くできてよかった」。同じく副隊長で唯一の男子、野崎将太くん(青井中2年)は、「女子の中で最初は抵抗があったが、いざ練習すると関係なかった」と振り返る。
柳役の八戸舞実さん(東綾瀬中3年)は「尊敬していた先輩がやった役。プレッシャーもあったがうれしい」。女2人が取り合う男を演じた李ソルギさん(同)は「男役は動作が難しかったが、どろが一緒に稽古してくれた」。軽い気持ちで参加したという恋敵役の菱沼沙希さん(蒲原中2年)は「体調を崩した時、心配してもらった」。
「中学生とは思えない舞台だった」と賛辞を贈られたメンバーたち。楽屋で全員が達成感に涙をにじませていた。
写真=上演後、満場の拍手を浴びる中学生選抜の出演者たち