足立朝日

VOL.99アンソニーとクレオパトラ 平幹二朗

掲載:2010年11月5日号
男性のみで演じるシェイクスピア

 シアター1010主催のドラマティック・シアター「アントニーとクレオパトラ」が、12月にいよいよ同劇場で上演される。
 シアター1010主催のドラマティック・シアター「アントニーとクレオパトラ」が、12月にいよいよ同劇場で上演される。
 男性俳優のみによる濃密な恋愛史劇。この大スペクタルを演じるのは、平幹二朗、松井誠、和泉元彌、今井清隆ほか超豪華メンバー。ウィリアム・シェイクスピア原作の訳は勿論、小田島雄志。斎藤栄作の潤色により、成熟した大人の切なく激しい恋愛模様が余すところなく描き出される。演出は板垣恭一。「暗くなるまで待って」「キサラギ」など多数の作品で発揮した人間の心の機微を丁寧に描く手腕は抜群で、本作品でもその力が光る。
 舞台はエジプト。愛の饗宴三昧のアントニー(平)とクレオパトラ(松井)。正妻逝去の訃報が入り、正気を取り戻したアントニーは、反対するクレオパトラを残しローマへ戻る。アントニーとオクティヴィアヌスの確執を和らげるために、プロキューリアス(高橋茂紀)からオクティヴィアヌスの姉・オクティーヴィア(金子裕)を妻にめとる提案が出る。アントニーの再婚の知らせに、クレオパトラは怒り狂う。アントニーのお抱え占い師(光枝明彦)と道化(深沢敦)は、アントニーの暗澹たる未来を予言するが……。
 シェイクスピア劇と聞くと、堅苦しいものを想像する人もいるかもしれないが、これほどひとりの人間の中に潜む愚かさ・滑稽さ・愛の深さなどが万華鏡のごとく描写されるものは稀有である。特に本作品に於いては、コミカルなやり取りが多いため、シェイクスピア劇のイメージが変わること請け合いだ。
 シェイクスピアの全戯曲を演じることをライフワークとする平は言う。「〈運命の女〉に出逢った男が恋ゆえに身を滅ぼすという物語に、僕はどうしようもなく惹かれてしまうんです。シェイクスピアはこの戯曲で、一貫して屈折した大人の男女の愚かさや弱さを描き続け、死が訪れる最期の最期で、彼らの愛が本物であったという真実を美しいことばに乗せてつづっている。その時、愛に身を捧げた2人の存在は天上に昇る資格を得て昇華されるんです。こうした描き方は、まさに大人の作品だなと思いますね」
【上演日時】12月1日(水)午後6時半、2日(木)3日(金)午後1時、4日(土)正午・午後4時半、5日(日)午後1時。
【料金】8500円、足立区民割引・8000円、フレンズ会員・7500円。【チケット】TEL5244・1011。