足立朝日

VOL.103うそつきテコちゃん 演劇集団「未踏」

掲載:2011年3月5日号
子どもの問題は全て大人の責任

 足立区梅島の地で劇団を運営して20年。演劇集団「未踏」が創立45周年を記念し、その実績を持ってシアター1010ミニシアターに登場する。作品はミュージカル「うそつきテコちゃん」。
 同劇団代表の立川雄三(写真左)が書き下ろし、かつて足立区民によるミュージカルを実現した原田一樹が演出する。
 訳ありテコちゃんのうそが、うそか本当か仲間に見極めてもらうために、テコちゃんは裁判にかけると言い出す。ところが裁判長はサイ、検察官はネズミ、弁護士はオオカミという怪しげな動物たち。テコちゃんはなぜうそをつくのか、そこには隠された秘密が……。
 日々、子どもを巡る悲しい事件が報道される中、様々な解説や論評が真実を解明するべく盛んに行われるが、事件当事者の心の闇はあまりにも深く、簡単に解明できるものではない。立川は「あらゆる事件の背景にあるのは大人の存在。大人の姿が子どもに反映しているので、全ては大人の責任問題。大人である自分の責任でもあるが、解決法や答えがあるわけではない。しかし、どうにかしなければ」と考える。そして、立川の出した自分なりの責任の取り方が、「作品を書くこと」であった。
 それは子どもだけのためではなく、大人のためでもある。現在、立川が心を痛めているのは、「親が子を愛する」という当たり前の本能さえ失いつつある状況。「それは何故なのか」を芝居で多角的に究明することは大変困難ではあるが、是非やらなければならないと考えている。「こうあってほしい」との願いを込めて書く作品は、決して陽の当たるものではないが、観る者の心をジワジワと温めていく。
 実生活に直結しない演劇は、常に選択肢の隅に追いやられがちであるが、夢や希望を育む感性を磨くために大切なもののひとつ。場合によっては、一生「演劇」を観ないままで終わってしまう人生もある。
 今回、足立区教委の後援のもと、シアター1010との共催で渾身の力を込めた作品を上演できることに立川は感謝する。制作者・俳優である吉田メグミ(写真右)は、検察官を演じるにあたり実際の裁判を傍聴した。その思いが舞台で花開く。
 【日時】5月20日(金)午後7時、21日(土)午後2時・6時【料金】足立区民割引(大人)3000円、(中学生以下)2000円【場所】シアター1010ミニシアター(10階稽古場1)【チケット】TEL5244・1011【劇団問合せ】TEL3880・0034