足立朝日

全国から愛された ドラマの舞台—千住・柳原 金八先生、荒川土手で最後のロケ

掲載:2011年3月20日号
 足立区の荒川土手を全国的に有名にしたドラマ「3年B組金八先生」が、3月27日(日)のスペシャル放送を最後に、30年の歴史に幕を閉じる。
 長年、ロケを見守ってきた千住の街の人々にとっても、卒業の季節となった。


金八先生、荒川土手でロケ卒業
 最後のロケが行われたのは、2月21日(月)。 坂本金八役の武田鉄矢さんの最終シーンが、午前中に土手の上で撮影された。
 ドラマの中の桜中学校の通学路となっている見晴らしの良い草道を、定年を迎えた金八先生が何度も繰り返し歩く。晴れには恵まれたが、寒風が土手上では更に冷たく、本番のたびに防寒用のベンチコートを脱いでスーツ姿で臨む武田さんの背後に、建設中のスカイツリーが見えた。
 最初のシリーズを撮影した頃は、高速道路もまだなかったという。武田さんは、「土手の移り変わりを記録してきた番組でもあるわけだから、スカイツリーを最後に見ながら終わりを迎えるというのが、不思議ですね。下町の変化もすごいものです」と、目を細める。「淋しいですけど、お世話になりました」。淡々とした中に温かみのある口調が、生徒たちを育て続けてきたドラマの中の金八先生の優しさと重なる。
街の人の協力
 ロケには周辺住民の協力が不可欠だ。「ロケは水ものだから、その場で物や人を調達することもたびたびあった」とスタッフの1人。撮影班と住民のコミュニケーションが、長年のロケを支えてきた。
ドラマとともに30年を歩んだ店
 ロケ場所としてだけでなく、控え室としても協力していた店がある。日の出屋(柳原1-33-2、TEL3888・1664)だ。
 創業は昭和26年。看板には「和菓子・中華そば」の文字。入口のショーケースで和菓子を販売し、店の中ではラーメンが食べられるという、今では珍しいスタイルを続けている。店主の近藤光一さん(57)と妻の友子さん(53)が、ロケ隊を常にあたたかく迎え入れてきた。
 奥の座敷で名取裕子さんがメイクをしたことも、食堂で生徒役のタレントが勉強していたこともあったという。その横で「仕事も大事だけど、勉強しなきゃ」と、プライベートでも先生ぶりを発揮していた武田さんが、印象深いと言う。「目指していた先生に、ドラマの中でなれてよかったですね、と先生(武田さん)に話したんですよ」と振り返る。
 店名を目指して、今でも金八ファンが訪れる。現職の教員や、広島から来る人もいるという。店内に飾られた出演者のサイン色紙も、ファンにはたまらないだろう。「たのきん」時代にはファンが集まりすぎて撮影が進まないなど、迷惑したこともあったというが、「金八を軸にして、いろいろ友だちができた。再放送があるだけで、人の流れが違う。終わるのは淋しい」と近藤さんは語る。
夢を引き継いで
 校舎のロケに使われていた第二中(現在の東京未来大学)が統廃合となった当時、跡地に金八記念館を作ろうと、故羽毛田順会長を中心に「金八記念館推進委員会」が発足。近藤さんは副会長として、街の活性化を目指して活動していた。夢は叶わなかったが、名称を「千住まちづくりサポーターズ」(阿部賢治代表)に変え、「少しでも街が明るくなれば」と、バザーなどで活動を継続。当時の想いは引き継がれている。
【3年B組金八先生ファイナル「最後の贈る言葉」4時間SP】
 3月27日(日)午後7時~11時9分、TBSで放送。第1~8シリーズ(第3シリーズは除く)の桜中学卒業生150人以上が、過去の映像なども交えて登場する。北千住駅西口のサンロード商店街でもロケが行われたほか、桜中学校の外観は旧新田小学校が使われている。

写真上/2月21日、足立区での最後のロケが、お馴じみの荒川土手で行われた
中/ロケを支えてきた「日の出屋」を前に、店主の近藤さん夫妻
下/撮影中の呼び名も「先生」。金八先生役の武田鉄矢さん