足立朝日

足立学園の吉本くん 生粋の足立っ子 夢の球界へ!

掲載:2011年11月5日号
 熱狂の日から2日後。吉本選手は、埼玉県三郷市の足立学園野球部練習場で、1、2年生に混じって体力づくり中心のメニューをこなしていた。
 「本当にうれしかった。ソフトバンクとは思っていなくてビックリ」。目を輝かせて話す顔は、喜びの実感に満ちている。指名の一報は、3年の元部員たちと教室で聞いた。「足立区から甲子園一番乗り」は果たせなかったが、夢へと大きく羽ばたくエースを仲間が祝福した。
 辰沼小、蒲原中出身。小1から野球を始め、高校進学時には強豪校からの誘いもあったが、「地元の学校に行きたい」と足立学園に。成績も良く、ほんの1年前まで「普通に大学に行って、社会人になると思っていた」。今の自分に一番驚いているのは、本人のようだ。
 プロ選手が現実的な夢になったのは、今年春の大会後という。「強豪チームと対戦し、実力が出せるようになった」。成長の理由を、「3年になって自覚と、練習に取り組む姿勢が変わった。それまではマウンドでも頭を使っていなかったし、変化球も使えなかった」と分析する。鈴木龍監督も「地道に積み重ねてきたものが、春以降に花開いた」。ただ、予想を超えた飛躍には「足立学園と野球部が、彼にマッチしたのでは」と困惑気味に笑う。
 187㎝の細身の長身に甘いマスク、最速149㎞の速球としなやかなフォームで、「下町のダルビッシュ」と評判に。ダルビッシュは目標であり尊敬しているが、「早く吉本祥二の名前で呼んで貰えるように頑張りたい」と、強い顔も覗かせる。
 今の目標は「先発ローテーションを任されること」。指名直後のコメントは「球界№1投手」では? 「あれは興奮していたので」と照れ、「現役やっている中で達成できれば」。
 足立区の野球少年たちにエールを貰った。「1日1日を大切に。プロを目指すなら自分の才能を生かしていけば、実現できるかもしれない」。控えめな言葉が吉本選手らしい。
 北村廣校長は、「厳しいプロの道を選んだ以上、頑張って欲しい。本人には、伸びる可能性を与えられたのだから、潰れるな、潰されるな、と話した」と、喜ぶ。
 足立学園は難関の東大理Ⅲ合格者を出すなど、文武両道の活躍が目覚しい。「勉強だけでなくスポーツも楽しめる人間になって欲しい。地域の子どもたちをしっかり育てて、社会に送り出したい」。理念が実を結んでいる。

写真/思い出深い足立学園の練習場でプロでの目標を語った