足立朝日

この本

掲載:2011年12月5日号
①『渋沢栄一/社会企業家の先駆者』島田昌和著・岩波新書刊(800円+税)
 日本の近代社会形成にあたり、ビジネスの領域で「日本資本主義最高の指導者」と評価される渋沢栄一。多くの研究者や小説家らは、渋沢が農民から武士身分を獲得した青年期に着目し、働き盛りの時期のビジネス活動について、ほとんど採り上げていない。本書を編んだ島田氏は、渋沢の生い立ちから90年にわたる多彩な経済活動・社会活動の全容と、日本社会への貫徹した思い、さらには、その限界をも通じて、真摯に渋沢の一生と向き合ってきた。本書は第1級の渋沢栄一研究書でありながら、エンターテインメントの要素が満載で、まるで歴史小説を読むような昂揚感がある。
②『日暮里・舎人ライナー秘話』三原將嗣著・産経新聞出版刊(1600円+税)
 交通過疎地であった足立区西北部に、「新交通システム日暮里・舎人ライナー」が開通してから約3年。現在では舎人地区と日暮里駅を、わずか20分で結ぶ便利さを人々は享受している。しかし、その裏には、筆舌に尽くし難い36年間のドラマがあり、数えきれない辛苦や落胆が存在する。それらを目の当たりにし、自らもその中に身を置きながらライナー開通に奔走した著者・三原氏。その目は、舎人地区発展のために闘い続けた故・小金井俊輔氏に温かく注がれる。ライナーの生みの親ともいえる同氏は、起工式を見ることなく逝去。三原氏は今、責任感と使命感に燃え、36年間の秘話を本書に記した。