足立朝日

訃報

掲載:2012年1月5日号
 シアター1010前館長で、(社)日本放送作家協会・前理事長の市川森一氏が12月10日、肺癌のために死去した。葬儀が営まれた青山葬儀場には、市川氏の交友の広さを物語る各界からの弔問客が参集し、「森」を連想させる祭壇に献花した。
 散逸されがちな放送界の脚本保存のために「日本脚本アーカイブズ」設立に向け、足立区に設置された準備室を拠点に、実現に向けて奔走した。
 1966年に『怪獣ブースカ』で脚本家としてデビュー後、『傷だらけの天使』『淋しいのはお前だけじゃない』など独特の世界観で一大センセーションを巻き起こした。若くして『黄金の日日』などの大河ドラマも手掛け、映画・舞台にもフィールドを拡げた。シアター1010でも自らの筆による『銀河鉄道の夜』『蝶々さん』を上演した。
 芸術選奨新人賞、芸術選奨文部大臣賞など多数受賞。2003年には紫綬褒章、2011年旭日小受章を受章した直後、肺癌が発覚。愛する故郷・長崎に向けたメッセージをマスコミに託し、最期は自宅で妻の美保子さんに看取られながら、70年の生涯を閉じた。

写真/市川森一 森へかえる