足立朝日

日本一おいしい給食を目指す「足立区の給食レシピ本」 全国で大反響

掲載:2012年2月5日号
 足立区の給食が今、全国的に話題になっている。昨年7月に出版されたレシピ本「東京・足立区の給食室」(1200円税別) が、1月10日(火)のネット通販で、なんとデイリー1位を獲得!
 「おいしい給食日本一」を目指す足立区の給食を、家庭でも作ってみてはいかが。


 ネット通販で1位になったのはAmazon(アマゾン)、楽天ブックス、セブンネットショッピングの3社。昨年秋頃から部数を伸ばしていたが、この日はテレビで大々的に紹介されたことで、大きな注目を集めた。
 2月1日(水)放送の番組でも反響があり、即8刷を増刷、トータルで7万部を超えた。1万部でヒットと言われるレシピ本としては快挙だ。
 発行元は㈱アース・スター エンターテイメント(恵比寿)。足立区の取り組みに興味を持ち、区に粘り強く交渉した末、出版にこぎつけた。
◆大人が食べてもおいしい
 足立区は給食センターではなく、学校の給食室で調理している。だしは全て昆布やカツオから取り、化学調味料は使わない。ドレッシングも全て手作りだ。
 子どもたちにいかにおいしく食べてもらうかを工夫し、愛情と手間をかけている。実際に給食を食べた大人は「給食ってこんなにおいしいんだ」と驚く。そして、なんと言っても、栄養バランスの良さは給食ならでは。
 「給食で出たおかずが食べたい」と家で話す子どもが増え、多くの区民から要望が寄せられたことから、区のホームページに昨年1月からレシピを掲載。「おいしい給食フェスタ」では区役所14階のレストランで、給食メニューを期間限定で販売、大反響だった。
◆おいしい給食を目指したワケ
 近藤やよい区長は、都議会議員時代、都の一番多い生ゴミが給食なのを知った。区長就任後、「転校したら子どもが給食を食べなくなった」という母親の声を聞き、「同じ予算なのに、残菜ゼロと2割の学校があるのはおかしい」。ここから日本一おいしい給食を目指す取り組みが始まった。
 当初は子どもを甘やかす、と反対の声もあった。「好きなものだけを食べさせるというわけではない。一生を通じての食べることの大切さを、小さい頃から身につけて欲しい。コンビニなどの濃い味に慣れていると、天然のダシを物足りないと感じる。いいものの方がおいしく感じないなんてもったいない話」と区長。
 平成20年、各校の残菜量を出すことから始めた。学校ごとに何が残るかを調べて、栄養士が分量の見直しや味付けを工夫。勉強会や、区が招いたスーパーシェフのアドバイスからも学んだ。
 学校の意識も変化。食わず嫌いの子がグリーンピースの鞘(さや)むきの体験後食べられるようになるなど、食育も行った。22年度の残菜は20年度に比べて、小中学校109校の平均が11%から7%に減少した。
◆レシピ本の魅力
 区提供の約700のメニューからピックアップし、家庭向けのオリジナルの組み合わせを掲載。
 給食は、野菜の種類が多い上、湯通しが必要など制約があるが、家庭で作りやすい内容に変えてある。牛乳から摂取するカルシウム量も、他の食材で調整するなど工夫。
650㌔カロリー程度なので、高齢者からの問合せも。栄養バランスが一目でわかる円グラフ「栄養の通信簿」も画期的だ。
 アース・スター営業部の木村麗子さんは、「足立区のレシピを参考に、全国でおいしい給食が広がればいい。家庭のコミュニケーションのきっかけになれば」と話す。
 本について区長は、「誇らしいと思ったという区民からの声があった。印税は区制80周年のお祝い膳など、子どもたちの給食に還元したい」。
◆給食は元気の元
 「給食がおいしい学校は子どもたちが元気」。区内栄養士の言葉だそうだ。
 大人にとっても懐かしく魅力的な給食。いつか「足立区の給食レストラン」なんてものができたら、素敵だろう。

写真上/「東京・足立区の給食室」=1200円+税
中/「鶏の竜田揚げごはん」。春らしい「たけのこと春雨のスープ」、「菜の花のからし和え」がついて648キロ㌍
下/ライスにピッタリの「グリーンシチューとミモザサラダ」は694キロ㌍