足立朝日

被災地に届け1000の手の祈り 3月30日(金) 千手の絆キャンドルナイト

掲載:2012年3月5日号
 東日本大震災から、まもなく1年。足立区では、犠牲になった人々の冥福を祈り復興への願いを込めて、両手を合わせて作った500人分の手型キャンドルを灯す「千手の絆キャンドルナイト」 を、3月30日(金)に行う。

 500人分の両手を合わせた1000の手型キャンドルは、1月から14回にわたって、東京藝術大学千住キャンパスでワークショップの参加者によって作られた。
 プロジェクトの発案者は、同大卒業生で講師の現代美術家・渡辺五大氏(44)。足立区と渡辺氏が5年間共同で行ってきた、東京芸術センター前広場の「光のお化け煙突」が、一昨年に終了。新たなプロジェクトを考えていた矢先に、震災が発生した。
 「震災が起こった当初は力になりたいと常に思っていたが、生活支援が優先だった。1年が経とうとしている今、美術家として何かやれないかと思いついた」と渡辺氏。「千住から何かをやっていることを知らせたい」
キャンドル作り
 2人1組になって行う。各自が手のポーズを決めて、ぬるま湯で溶いた海藻成分の型取り剤につけて、固まるのを待つ。
 ポーズは合掌の形でも指を組んでも自由だが、隙間を作らないことがポイント。簡単そうだが、型取り剤につけたまま5分間、動かせないのは結構重労働だ。渡辺氏から「子どもでも我慢できなかった人は一人もいないので、大丈夫」と励ましを受けて、大人たちも長い5分を耐えた。
 ゴム状に固まったところで慎重に手を抜き、芯のたこ糸を差し込む。その後、アシスタントの院生たちによってロウが流し込まれ、約1時間冷やせば完成だ。
 ロウが固まるのを待つ間、キャンドルを入れる灯篭を作る。透明で火に強いポリカーボネイトに、マジックで思い思いのメッセージや絵を書いた。
 2月18日(土)のワークショップには近藤やよい区長も参加した。
 千住関屋町の瀬能健吾さん(43)、妻の章子さん、娘の翠香ちゃん(9歳)は、「少しでも復興のお手伝いになれば」と参加。健吾さんのキャンドルは、翠香ちゃんと手をつないだ合作にした。しっかりと組み合わされた大小の手に、家族の愛情と祈りがこめられている。
 新井誉子さん(42)は、父、夫、4歳の娘と参加。母親の田舎が石巻で、小さい頃、泊まりに行っていたという。みんな無事だったが、家は流された。「大すき東北 がんばれ東北」のメッセージに思いを込めた。
 他にも、「つながろう」「祈り」「日本が元気になりますように」「願いは必ず叶う」――力強い言葉が、祈りの手を囲む。
遠くにいるあなたへ笑顔を
 原発事故で福島県双葉郡富岡町から避難してきている高校生も、「祈り」作りに参加している。
 足立工業高校2年の新妻光さんだ。両親、2人の姉、弟の6人家族だが、昨年5月に単身、学生避難者として上京し、新木場の寮で暮らす。地元の同級生が先に転入していた同校を、転入先として選んだ。
 昨年11月、生徒会に立候補し、現在は生徒会副会長を務める傍ら、軽音楽、演劇、放送、調理部の4つを掛け持ちし、充実した日々を送っている。
 今年1月、生徒会役員として、ペットボトルから再生したフラワーポットを届けに行った際、区長に誘われて生徒会挙げて参加することに決めた。生徒会役員12人、教員4人がキャンドル作りに挑戦した。
 「地元の人たちも喜ぶだろうなぁ、と思いながら作りました」。光さんが灯篭に書いた言葉は、『遠くにいるあなたへ 笑顔~Smile』。「想いが伝わればいいな、みんなが笑顔になって欲しいな、と」
 地元の人たちとの連絡はあまり取れないが、光さんの笑顔はまぶしい。「生徒会だったり、先生だったり、友だちだったり、いろいろな人のおかげでここにいられるんだなぁと思う」
 やりたいことがありすぎて、将来の夢はまだ決めていない。今は「生徒会の地域との交流をしっかりやっていきたい。足立工業高校のことを知ってもらいたい」と光さん。遠く離れた場所で、生き生きと明るく頑張っている光さんの笑顔が、力となって届くに違いない。
千手の絆キャンドルナイト
 祈りの形をした500人分の手型キャンドルに、一斉に火が灯される。当日、義援金も募集する。
【日時】3月30日(金)午後6時~8時
【場所】北千住東口 交通広場(現在整備中)
◆北千住駅東口交通広場
 現在整備中の東京電機大学に隣接する交通広場が、3月31日(土)に一般車両開放となる。時間は未定。
 今年度は暫定的開放。タクシー乗り場が設置されるほか、広場の周囲にはヤマボウシが植樹され、緑豊かな景観となる。
 電大キャンパスの中を通って、大踏切を通る補助139号とつながる区画街路12号線のロータリーとして利用される。

写真上/地元の家族や仲間に笑顔を届けたい、と新妻さん
中/パパと娘の合作キャンドル作り
下/「動けないのが大変」「でも、おもしろい」