足立朝日

Vol.115容疑者χの献身

掲載:2012年3月5日号
驚きの結末 感動の涙

 東野圭吾の傑作ミステリー『容疑者χの献身』(文春文庫刊)が、「キャラメルボックス2012スプリングツアー②」としてシアター1010に登場する。
 冴えない数学教師・石神は、隣室に住まう靖子を密かに愛している。ある晩、彼女の部屋で起こった不穏な動きを察知した石神は、靖子の部屋を訪れる。その後、隅田川の河川敷で男の死体が発見され、警視庁・捜査一課のベテラン刑事・草薙らが捜査に乗り出すが、捜査線上に靖子が浮かび上がる。草薙は帝都大学時代の同期・理学部准教授の湯川に協力を求める。捜査のプロセスで石神の名前を知った湯川は、それが大学時代の友人で数学の天才・石神であることを知り驚愕するが……。
 3人の男たちの思いがスリル感たっぷりに交差し、その結末には思わず涙する。「愛すること」の意味や、久しく聞かなくなった「良心」という観念が、心に染みわたる傑作である。
 脚本・演出の成井豊は、同作品にかける思いを次のように語る。「3年前の初演は、お陰様で圧倒的な好評をいただきましたが、脚本家・演出家としては、『もっとよくできる』という悔いが残っていました。今回の再演では、いくつかの改良を加えて、より一層感動的な作品に仕上げるつもりです。『容疑者χの献身』は、壮絶な愛の物語です。主人公の男は、一人の女を命懸けで愛します。その姿、その限りなく深い愛情こそが、この作品の最大の見所だと思います」
 タイトルの『献身』という言葉は、作品の深い内容に果たしてマッチするのだろうか? そんな疑問を持つほどの心震える感動が、ラストに待ち受けている。
 シアター1010が主催するワークショップの一環として、数度の「朗読劇」を開催し、足立区とは縁が深い成井は、今日もあのパワフルな声で演出に汗を流す。成井メソッドの魔法全開の舞台は、観客の心の中にいつまでも残り続ける。
【日時】6月15日(金)午後7時、16日(土)午後2時。【料金】7000円。足立区制80周年記念区民特別料金(サンキュー80周年)=3980円(2階席のみ)【チケット】3月18日(日)前売開始。TEL5244・1011。