足立朝日

故・市川森一追悼公演 島田歌穂『蝶々さん』再び

掲載:2012年10月5日号
 2007年に初演され、好評を博した故・市川森一原作のミュージカル『蝶々さん』が、かつて市川が館長を務めたシアター1010で追悼公演として再演される。
 長崎県生まれの市川は、日頃から「プッチーニのオペラ『マダム・バタフライ』は、蝶々夫人への誤解と偏見に満ちている」と感じ、「武家の娘」としての蝶々さんこと「お蝶」にスポットライトを当てた。市川自身が、祖父の代まで島原藩で三百石の禄を食んでいた十三代市川家当主であることから、お蝶を通じて、自らの根底にある「武士道」「士風の美」を見事に描ききった。
 そのお蝶を、初演に引き続き演じるのは島田歌穂。その豊かな声量と歌唱力で、ミュージカルからストレートプレイまで幅広く活躍。菊田一夫演劇賞、紀伊國屋演劇賞個人賞など多数の受賞歴を持つ逸材である。
 『蝶々さん』では、音楽監督で島田の夫でもある島健による音楽が、ドラマチックに作品を盛り上げる。お蝶をサポートするコレル夫人・剣幸と島田との、言葉のキャッチボールが絶妙。宮川浩演じるアービン宣教師の、お蝶を見守る姿が胸に沁みる。お蝶に淡い恋心を抱く書生・木原役に小野田龍之介。台本・作詞・演出は忠の仁。
 今回の再演について、島田は市川への思いを語る。「市川先生原作の朗読劇『蝶々さん』に参加させていただいたのは8年前。ミュージカル化にあたり、先生からどれほどのお力をいただいたか計り知れません。きっとまた劇場のどこかで見守って下さる事を信じ、感謝をこめてこの舞台を先生に捧げます」
【日時】11月27日(火)午後7時、28日(水)午後1時【場所】シアター1010【料金】6000円【チケット】TEL5244・1011