足立朝日

昔話にもヘビが登場  「足立の昔がたり」刊行

掲載:2013年1月5日号
 足立区の昔話を集めた本「足立の昔がたり」(区制80周年記念事業)が、昨年10月に刊行された。
 区立中央図書館が、「足立百の語り伝え」(86年/区教育委員会)、「続・足立の語り伝え六十六話」(’91年/同)を元に、「ぜひ子どもに伝えたい40話」をピックアップして制作したもので区内全小学校に配布した。
 表紙は千住在住のイラストレーター・なかだえりさん、挿絵は柴田智子さん。直木賞作家の朱川湊人さん(花畑在住)が監修した。
 読み語りや学校図書館のボランティアなど、区民編集委員7人が、歴史や資料などを熱心に調査し、元文章を作成。それを朱川さんが書き直し、40の物語として完成させた。
 今年の干支・ヘビの話は、じんがんなわ(西保木間)、諏訪神社の使いの白ヘビ(舎人)、水神になったヘビ(西保木間/水神橋・水神社)、ヘビになった村人(桑袋)の4話ある。
 じんがんなわの大乗院のすぐそばに住んでいた朱川さんも、昔話はあまり知らなかったという。「中学の時に、水神橋のヘビの話を聞いたことがあるぐらい」。今回刊行に携わって、意外に歴史のある地域だと知った。「ヘビの話が多いのは、湿地帯でヘビが多かったからでしょうね」
 昔話を知る大切さを、こう話す。「そこでの出来事に、人の感情の動きがあった方が、人は惹(ひ)かれる」。八幡太郎義家など歴史上の有名人もいて、さらに興味が湧く。「普通の路地でも、昔ここにこんな太いヘビがいたんだ、と思うだけで面白くなる。その土地に愛着が湧くというのは、そういうところから始まる。子どもたちにも、楽しんでもらえるのでは」
 いつも何気なく通っている場所に隠れているワクワクを、子どもたちと一緒に探してみるのも楽しい。
【図書館&電子書籍】
 販売はしていないので、読みたい人は区立図書館で貸出している。また、区のHPで電子書籍を公開。読み語り音声データ付き。区内で活躍している古今亭駿菊師匠など6人の噺家・講談師による、心地よい昔語りを楽しめる。

写真/表紙はなかだえりさん