足立朝日

この本

掲載:2013年2月5日号
①『好楽日和。』三遊亭好楽著/晶文社刊1700円+税
 人気長寿テレビ番組『笑点』で「ピンクの着物を着た仕事がない人」キャラで親しまれている好楽さん。初の落語集CD『好日落語』に続き、遂に著書を発刊! 「笑点裏話」から始まり、4章から成る内容を読み進めると、好楽さんと師匠(八代目林家正蔵、五代目三遊亭円楽)、先輩や同輩との関わりに心がジンワリと温まる。
 ビンボー暮らしを謳歌しながら、とみ子夫人との間にもうけた愛息が、今では若手人気落語家・三遊亭王楽さんとして活躍。最終章では王楽さんとの親子対談が展開され、味のある言葉が飛び交う。しかも、最後には親子リレー落語『左甚五郎』CD付という大盤振る舞い。
 物の見方・考え方で、人生はこんなにも豊かで楽しいものになるという良きアドバイス本でもある。
②『55歳からのハローライフ』村上龍/幻冬舎刊1500円+税
 「中年のための職業探し指南本!?」と思ってページをめくると、良い意味で裏切られる。村上氏が新聞連載として書き続けた5編の中篇小説の主人公たちが、同書から立ち上がってくるからだ。
 人生の折り返し地点に立ち、「再出発」を図ろうとする「ごく普通の中高年」の姿が、切なく愛おしい。体力も財力も万全とは言えない世代が、この時代をいかに生き抜けば良いのか? そのひとつの答えは、人生の中で誰とどれだけの「信頼関係」を築いてきたかが鍵を握る。その鍵を求めて、5編の物語の中にあなたの姿を求めるのも悪くはない。