足立朝日

福島から避難 新妻光さん、足立工業高校を卒業

掲載:2013年4月5日号
 足立工業高校(栗田博校長)=西新井4丁目=の卒業式が3月9日(土)に開かれ、144人が巣立った。
 その中に、特別な思いでこの日を迎えた生徒がいる。3年生唯一の女子生徒、新妻光さんだ。
 福島県富岡町出身で同県南相馬市の小高工業高校に通っていたが、福島第一原発事故により県内に避難。2年生の5月、単身上京し、都の被災児童・生徒の受け入れ施設で生活しながら、足立工業高校に編入した。
 「まさか女子1人とは思わなかった」と最初は戸惑ったが、積極的に様々な活動に参加し、友人も増えた。調理部、演劇部、軽音楽部をかけもちし、さらに「接客が好きなのでしゃべりたい」と、放送同好会も立ち上げ、生徒会副会長も務めた。
 昨年3月には、区と東京藝術大学による鎮魂イベント、キャンドルナイトに参加し、自分の祈りの手形のキャンドルを製作。福島の友人や家族への思いを込めて、「Smile for everyone」のメッセージを書いた。
 卒業生代表として答辞を読んだ新妻さんは、修学旅行の思い出や学校生活を振り返り、「つらくて嫌なこともたくさんあった。支えは友人や先生。生きていて良かったと、心から言える」。その思いを伝えたくて、震災時の様子を、初めて言葉にした。「私はとっさの判断で生き残ることができた。どうか震災を忘れずに、力を貸して欲しい」。机の下に潜った直後に、家具が倒れてきたという。最後に、「生きていて良かったと思える人生を送って欲しい」と、仲間や後輩たちにエールを贈った。
 4月からは専門学校に進む。地元では原発関連企業に勤めるつもりだったが、東京に来たからには違うことがやりたい、と接客業を目指す。
 「充実した1年間だった。いろいろなことを経験して忙しかったけど、身につくのでやってよか
った。将来はレストランで働きたい」。輝くばかりの笑顔で、新たな一歩を踏み出した。

写真/卒業証書を手に新妻さん=足立工業高校で