足立朝日

わらび座俳優 菅野真以(すがのまい)さん

掲載:2013年4月5日号
梅田出身
足立からわらび座俳優誕生


 「命」や「愛」をテーマとする手塚治虫作品に、深い思いを抱く劇団わらび座。同氏原案によるミュージカル『火の鳥 鳳凰編』に続き、第2弾『アトム』を全国で上演し、2月24日、新宿文化センター大ホールで千秋楽を迎えた。当初、「アトムをミュージカル化!? 役者が宙乗りをする!?」とセンセーションを巻き起こしたが、実際の舞台では役者がアトムの扮装をするのではなく、セリフの進行により「かつてアトムがいた」ことが観客に伝わる。人間のエゴが発端となって、増幅される憎しみや悲しみの中で、失った命を通じてお互いを思いやり、理解し合い、愛し合うことの貴さを謳いあげた舞台は、老若男女に深い感動を与えた。
 ロボットを愛した少女の力となる女友だち「エミ」のパワフルな演技は大きな存在感を放ったが、それを演じたのは足立区梅田出身の菅野真以さん。わらび座との出会いは、都立国際高校時代の演劇鑑賞会で、同劇団のパフォーマンスバンド『響』の舞台を観たこと。
 「高校時代にチア・リーディング部に所属していたので、『響』の舞台はとても刺激的だった」と懐かしむ。さらに同校では、3年次の文化祭で各クラスがミュージカルに挑戦。菅野さんは積極的に主役に臨み、「ミュージカルへの思い」が芽生えた。
 やがて、早稲田大学に進んだ彼女は、当然のごとくミュージカル研究会へ。その後の就活でわらび座と再会し、2009年に研究生として入座。 「みっちりと徹底した訓練の中で、自分たちが研ぎ澄まされていく2年間を、同期4人で乗り越えてきたから今の私が在る」と当時を振り返る。
 2011年に劇団員となり、シアター1010で学校観劇として上演されたミュージカル『アトム』では、ロボットの「チータン役」で出演。「足立区の沢山の小・中学生に観てもらえたのは意義あること。実際に外のお客様と出会って、お客様の思いに触れ、社会の中での舞台の必要性を感じた2年間だった」と力を込める。今後は『響』班に入り、『走れメロス』に出演する。
 手塚作品第3弾ミュージカル『ブッダ』が5月7日(火)~5月12日(日)、シアター1010で上演される。菅野さんは「わらび座だからこそ手塚先生の思いを舞台に乗せられる」とキッパリ。頼もしい俳優が確実に育ち、わらび座パワーとなっている。