足立朝日

思わず旅に出たくなる 駅弁の魅力満載 なかだえり『駅弁女子』出版

掲載:2013年5月5日号
 千住の蔵にアトリエを構えるイラストレーターのなかだえりさんが、『駅弁女子 日本全国旅して食べて』を出版した。
 大学で建築を学んでいたなかださんは、修士論文のための遊郭建築の研究がきっかけで、全国の遊郭めぐりがライフワークに。ローカル線に乗ることも多く、地域色豊かな数々の駅弁に出会い、その魅力に惹かれるようになったという。
 掲載されている駅弁は実に108種類。なかださん本人が食べたものを、イラスト入りで紹介している。ご飯の1粒1粒まで丁寧に、あたたかいタッチで描かれた弁当画は、「かにほぐし身しっとりぎっしり」など手書き文字による中身の説明つきで、駅弁愛に溢れている。
 電車型やだるま型などユニークな器の説明や、持ち帰ってからの再利用法も。製造元の歴史の紹介では、100年間1日も休んだことがないという会社もあって驚く。
 観光スポット、おすすめの土産物など、旅のガイドとして役立つ情報も。
 写真は1枚もなく、風景や駅舎も全てイラストなのが、なんとも贅沢。駅弁を通して綴られた、時代の流れや郷里・岩手への思いなどが、ほんのりしんみりと胸に沁みる。思わず旅に出たくなる1冊。

◆「さよなら蔵展」&「なかだえりの駅弁祭」5月25日(土)~6月2日(日)
 「イラストレーター・なかだえり」の象徴と言ってもいいほど印象深い蔵アトリエが、14年の歴史に幕を下ろす。
 築約200年のあずき蔵を、なかださんが古い建物の良さを生かしつつ手を加え、14年間、建築設計や執筆活動の拠点としてきた。残念ながら、持ち主の代替わりと耐震性の問題などにより、立ち退きが決定。14回目の今回が、最後の「蔵展」となる。
 『駅弁女子』の駅弁原画を一挙公開。原画は感謝価格で販売もするそう。なかださんが集めた駅弁のユニークなパッケージや器なども紹介。他にも風景などおなじみのイラストも展示する。
【日時】5月25日(土)~6月2日(日)午後1時~5時
【場所】蔵アトリエ(千住5‐6‐11)
【料金】無料
【問合せ】TEL3882・4942、MAIL

写真上/◆『駅弁女子 日本全国旅して食べて』A5判・128頁・淡交社刊/1300円+税
下/たこ壺入りのたこがおいしそう!