大抜擢の実力 シアター1010で
落語協会(柳家小三治会長)が太鼓判を押す実力派落語家2人が、大抜擢により昨年9月に真打に昇進。昨年の披露興行に続き、この7月にシアター1010で「W真打昇進披露興行」を行う。
まずは、朝太改メ古今亭志ん陽師匠。柔らかな人柄が滲み出る真打名は、画数にこだわり自身で考案したもの。今回の昇進について「自分でもとても驚いた。何々賞とかの受賞者が真打昇進するのが常だけれど、私は何もいただいてはいない。それでも努力すれば、こういうことがあるのだよということを、小三治会長が若手たちに示したのかもしれない。現に『私も頑張ります!』という言葉が出ていると聞いて、荷は重いがとてもうれしい」とニッコリ。
師匠の高座はとにかく楽しい。例えば『壺算』。値切り上手のトメさんの、マジックのような計算に惑わされる瀬戸物屋の主人。その間抜け振り・慌てふためき振りを演じることを、師匠自身が心底楽しんでいるからこそ、観客もまた大笑いできる。
平成10年に三代目古今亭志ん朝師匠に入門後、3年で師匠を亡くし、その後お世話になった志ん五師匠も逝去。平成22年、志ん橋師匠門下になり現在に至る。「後ろ盾を失うと、落語家は宙に浮いたような立場で本当に苦しい。そんな自分を救ってくれた代々の師匠に感謝」と恩義を感じ、精進を重ねてきた。
続いて、菊六改メ古今亭文菊師匠。今回、数十人抜きでの真打昇進を遂げたツワモノだ。「私たちの商売は、かけっこをして1等を取れば勝ちとかの基準がない。人それぞれ味があるので、世の中の流れとしてたまたま私がチャンスをいただいた。決して私が優れているということではない」とあくまでも謙虚。事実、師匠の演じる『稽古屋』を、会場の片隅で聴き入っていた小三治会長が評価。今回の昇進に繋がったといわれる力量は、「NHK新人演芸大賞」「落語一番勝負若手落語家グランプリ」受賞や各高座で実証。
学習院大学在学時に、師匠は生き方を模索。劇団NLTに所属したが、しっくりとこなかった。テレビで観た古今亭圓菊師匠に感銘し、平成14年に入門。厳しい前座修行をやり抜き、自分の生きる道を見出した。父の友人である歌舞伎役者・市川團十郎丈も、生前、師匠を応援。病を押して師匠の似顔絵と真打名、自身の「團」を入れた手拭いをデザインした。形見の手拭いと共に高座に上がる師匠の背筋を伸ばした姿は、まるで歌舞伎役者そのもの。その口から語られる話芸もまた、登場人物の一人ひとりの個性が際立つ名人芸だ。
落語協会を背負う2人の競演をぜひこの機会に! 柳家権太楼、三遊亭多歌介、古今亭菊之丞、柳家三三各師匠も舞台に華を添える。【日時】7月6日(土)午後2時【料金】3500円、フレンズ会員10%引TEL5244・1011
写真上/志ん陽師匠
下/文菊師匠
落語協会(柳家小三治会長)が太鼓判を押す実力派落語家2人が、大抜擢により昨年9月に真打に昇進。昨年の披露興行に続き、この7月にシアター1010で「W真打昇進披露興行」を行う。
まずは、朝太改メ古今亭志ん陽師匠。柔らかな人柄が滲み出る真打名は、画数にこだわり自身で考案したもの。今回の昇進について「自分でもとても驚いた。何々賞とかの受賞者が真打昇進するのが常だけれど、私は何もいただいてはいない。それでも努力すれば、こういうことがあるのだよということを、小三治会長が若手たちに示したのかもしれない。現に『私も頑張ります!』という言葉が出ていると聞いて、荷は重いがとてもうれしい」とニッコリ。
師匠の高座はとにかく楽しい。例えば『壺算』。値切り上手のトメさんの、マジックのような計算に惑わされる瀬戸物屋の主人。その間抜け振り・慌てふためき振りを演じることを、師匠自身が心底楽しんでいるからこそ、観客もまた大笑いできる。
平成10年に三代目古今亭志ん朝師匠に入門後、3年で師匠を亡くし、その後お世話になった志ん五師匠も逝去。平成22年、志ん橋師匠門下になり現在に至る。「後ろ盾を失うと、落語家は宙に浮いたような立場で本当に苦しい。そんな自分を救ってくれた代々の師匠に感謝」と恩義を感じ、精進を重ねてきた。
続いて、菊六改メ古今亭文菊師匠。今回、数十人抜きでの真打昇進を遂げたツワモノだ。「私たちの商売は、かけっこをして1等を取れば勝ちとかの基準がない。人それぞれ味があるので、世の中の流れとしてたまたま私がチャンスをいただいた。決して私が優れているということではない」とあくまでも謙虚。事実、師匠の演じる『稽古屋』を、会場の片隅で聴き入っていた小三治会長が評価。今回の昇進に繋がったといわれる力量は、「NHK新人演芸大賞」「落語一番勝負若手落語家グランプリ」受賞や各高座で実証。
学習院大学在学時に、師匠は生き方を模索。劇団NLTに所属したが、しっくりとこなかった。テレビで観た古今亭圓菊師匠に感銘し、平成14年に入門。厳しい前座修行をやり抜き、自分の生きる道を見出した。父の友人である歌舞伎役者・市川團十郎丈も、生前、師匠を応援。病を押して師匠の似顔絵と真打名、自身の「團」を入れた手拭いをデザインした。形見の手拭いと共に高座に上がる師匠の背筋を伸ばした姿は、まるで歌舞伎役者そのもの。その口から語られる話芸もまた、登場人物の一人ひとりの個性が際立つ名人芸だ。
落語協会を背負う2人の競演をぜひこの機会に! 柳家権太楼、三遊亭多歌介、古今亭菊之丞、柳家三三各師匠も舞台に華を添える。【日時】7月6日(土)午後2時【料金】3500円、フレンズ会員10%引TEL5244・1011
写真上/志ん陽師匠
下/文菊師匠