足立朝日

足立区の直木賞作家・朱川湊人さんの小説 初の映画化 「赤々煉恋」がまもなく公開 青春ダーク・ファンタジー

掲載:2013年12月5日号
 足立区在住の直木賞作家・朱川湊人さん(50)の初映画化作品「赤々煉恋」が、12月21日(土)から公開される。
 主人公は、自殺して霊となって街をさまよう女子高生・樹里。彼女の目線と体験を通して、「自殺」の問題を丁寧に問いかけている。



 原作は短編集「赤々煉恋」(東京創元社刊)収録の「アタシの、いちばん、欲しいもの」。メガホンを取ったのは、朱川さんが脚本を書いた2話分の「ウルトラマンメビウス」を撮った小中和哉監督(『四月怪談』)。同い年で「ウルトラマン」で育った2人は、感性が近いという。
 初の映画化に朱川さんは、「感慨深いものがありましたよ。小中さんもわかっていらして、私がこういうシーンが欲しいな、というものがあった」と太鼓判を押す。
 主人公の樹里は霊でありながら、生きている人間と同じリアルな姿で日常の風景の中に存在する。原作にはない高校生活や自殺の原因などが加えられ、思春期の若者の揺れる心に寄り添うように物語は進む。
 途中、ドキュメンタリーを思わせる場面がある。自死遺族会の集まりだ。監督が実際に取材を進める中で、入れることを決めた。「自殺事件が起きると、周りが立ち直るのが難しい。それを知って描かなければと思った」。監修は北千住旭クリニックの平山正実院長。
 自殺が大きな社会問題となって久しく、足立区でも様々な取り組みがされている。昨年は15年ぶりに全国の年間自殺者数は3万人を割ったが、20~30代の死因の1割を占める。
 だが世間では、自殺は本人や遺族の責任として特別視され、社会問題としての認識が薄い。「病気と同じように誰にも起こりうること」と小中監督。遺された者の痛みに、作家と監督の強いメッセージが込められている。
 朱川さんは「心にひっかかりを持っている人、悩みを持っている人に見て欲しい」。誰でも心が弱る時はある。1年の終わりに、大切なことを考える時間になるに違いない。
《ストーリー》
 自殺し孤独な霊となってこの世をさまよう女子高生・樹里。彼女を見るのは、人間に憑りつく不気味な虫男だけ。ある日、樹里は唯一自分にほほ笑む少女と出会う。だが、心温まる交流の先には衝撃的な結末が待っていた――。
 樹里を演じた若手実力派女優の土屋太鳳は、内閣府の自殺防止月間のキャンペーンポスターにも起用されている。
▼キャスト=土屋太鳳、清水富美加、吉沢亮、吉田羊、有森也美、大杉漣、秋本奈緒美ほか▼脚本=山野井彩心、小中和哉▼CGIモーション=アニメーター・板野一郎(『超時空要塞マクロス』)
▼公開=12月21日(土)より、角川シネマ新宿(伊勢丹本館向かい・明治通
り側、TEL5361・7878)ほか全国ロードショー。配給=アイエス・フィールド。

写真上/塀2013 朱川湊人・東京創元社/『赤々煉恋』製作委員会
下/原作者の朱川湊人さん