足立朝日

足立区からソチ五輪へ フィギュアスケート代表・髙橋大輔選手の足を支える 千住曙町・横山商店

掲載:2014年2月5日号
 いよいよ2月7日(金)に開幕が迫ったソチ五輪。4年に1度の大舞台で、足立区生まれのものが活躍する。
 フィギュアスケート男子代表の髙橋大輔選手が履くスケート靴。その木型を作ったのが、千住曙町34‐2の㈱横山商店だ。


◆金メダリストも
 1月のフィギュア四大陸選手権初優勝の無良崇人選手、今季で引退の安藤美姫選手も使用。プロの使用率も高い。荒川静香選手は、トリノ五輪の2カ月前に米社製から変え、見事金メダルを獲得した。荒川・安藤両選手は同社に足を測定しに訪れたこともある。
 「木型」は靴の原型となる足の模型のようなもの。これにより靴の幅、長さ、高さなどが変わってくる。
 髙橋選手が使用しているのは、同社が木型を提供して製造されたスイスのGRAF社のスケート靴。本人が2年前にスイスに赴き、履き比べて選んだという。昨年は別の靴に変えたが再び戻した。
 「日本人向けの形が、しっくり馴染んだからだろう」と、横山剛社長(60)。同社の木型を使ったスケート靴は重く安定感がある。髙橋選手と同モデルの靴を持ってみると、驚くほど重く、かかと部分はガッチリと鎧のように硬い。4回転ジャンプの着地の衝撃から足を守る作りになっている。

◆日本人の足に合う靴を
 ㈱横山商店は1960年(昭和35)、剛社長の父・安蔵さん(故)と母・さきさん(84)が創業。スケート靴をメインに、ボクシングや野球などスポーツ靴に特化している。2代目社長のさきさんから剛さんが3代目を継ぎ、妹の内藤浩子さんと営む。
 大半の日本人選手は外国製のスケート靴を使うが、「足の形は民族によって違う」。一般的に日本人は親指の第1指が一番長く、欧米人は第2・3指が長い。くるぶしの高さや母趾球(足裏の前の部分)の位置、土踏まずやふくらはぎの形も違うそうだ。
 だが、欧米人向けの靴は日本人に合わないことを、ほとんどの選手やコーチは知らないという。「売る人も求める人も知識が浅く、足のトラブルが多い。スポーツをしている人は競技に対する意識は高いが、足に対する知識や意識が低い」と浩子さんも案じる。私たちの普段の靴選びにも同じことが言えそうだ。
 家の中でも靴を履く欧米人に比べ、靴の歴史の浅い日本人は、足と靴の文化がまだまだ未熟。日本人が日本人のために作った靴を履くようになれば、もっと快適になる。横山商店の心意気だ。「求められるであろう靴を先回りして作っていかないと」
 初心者から競技者まで安心して滑れるスケート靴「ZAIRAS」を開発。小さい会社ならではのアイデアが生きている。

◆選手たちへのエール
 長年フィギュアスケート選手と関わってきた横山社長。テレビで観戦していたソチの最終選考会を兼ねた全日本選手権で、代表選手の最後に髙橋選手が呼ばれた時には、喜んだそうだ。「精神的な支柱になるから、選ばれて良かったんじゃないか。苦労してきているしね」
 さきさんも浩子さんも選手と会って話す中で、余人にはわからない苦労や悩みにも触れてきた。それだけに、選手たちの戦いを見る目は厳しくあたたかい。
 これからもアスリートの体と能力を、足元から頼もしく支えていく。

★忘れちゃいけない!その他の足立区縁の選手たち
 ソチ五輪出場者で、他にも足立区に縁のある人がいる。
 フィギュアスケート・アイスダンスのキャシー・リード&クリス・リード選手。姉弟は選手層の厚い出身地のアメリカを離れ、前回のバンクーバー五輪に日本代表として初出場した。
 父はアメリカ人だが、母の典子さんは足立区鹿浜出身(実家は埼玉県入間市)。応援したい。

写真上/フィギア世界国別対抗戦 男子ショートプログラムで妖艶な演技を見せる髙橋大輔=2013年4月11日/写真提供=日刊スポーツ新聞社
中/髙橋大輔選手と同モデルのスケート靴を手にした横山社長=横山商店で
下/壁には選手のサイン。左は荒川選手、右は安藤選手。真ん中はマネジャー経由で贈られた髙橋選手の色紙