足立朝日

この本

掲載:2014年6月5日号
①『ロスジェネの逆襲』 池井戸潤著/ダイヤモンド社刊1500円+税
 池井戸の『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』を原作に、理不尽や不正義と闘うテレビドラマ『半沢直樹』が誕生。その決めゼリフ「やられたら倍返しだ!」は、多くの視聴者の心をスカッとさせ、2013年「新語・流行語年間大賞」にも選ばれた。
 東京中央銀行のエリート行員である半沢が、中野渡頭取の失脚を願う黒幕を倒したにも関わらず、子会社である東京セントラル証券への出向を命じられて物語は終了。同書はその後日談である。
 IT企業の雄・電脳雑技集団より、ライバルの東京スパイラル買収話が東京セントラル証券に持ち込まれ、そのアドバイザーに就任。ところが、東京中央銀行から横槍が入り、事態は二転三転。池井戸ワールド全開の手に汗握る展開となる。
 半沢の仕事に対する信念が炸裂する「男の闘い」が眩しい。

②『ケルベロスの肖像』海堂尊著/宝島社刊743円+税
 累計1千万部突破の「チーム・バチスタ」シリーズ遂に完結! テレビドラマでは既にお馴染みのシリーズだが、早々と同書も映画化され、全国東宝系で公開済み。
 国際AI(死亡時画像病理診断)センター発足の目玉として導入された巨大なMRI「リヴァイアサン」。その公開を目前にして、東城大学医学部付属病院に一通の脅迫状が届く。「八の月、東城大とケルベロスの塔を破壊する」。目に見えない敵との頭脳戦が始まるが、海堂ならではのユニークな人物設定とユーモア溢れる文体がとにかく楽しい。文中に、過去の作品が次々とクロスオーバーするため、それらも読みたくなる仕掛けが憎い。
 海堂自身が現役の医師であり、独立行政法人放射線医学総合研究所重粒子医科学センターAI情報研究推進室室長を務めるだけに、破格のメディカル・エンターテインメントとなっている。