足立朝日

Vol.144新版喜劇『売らいでか!―亭主売ります―』左とん平

掲載:2014年8月5日号
心打たれる夫婦の機微

 喜劇の神髄を知り尽くした左とん平と、切れ者役が天下一品の浜木綿子が織りなす花登筺の傑作新版喜劇『売らいでか!―亭主売ります―』が、10月にシアター1010で上演される。
 物語の舞台は伊賀上野。町一番の名家・神代産業の当主である未亡人の里子(大空眞弓)に恋焦がれる杉雄(左)が、支配人・石上(加藤茶)の弟・弘(小野寺丈)の陰謀に巻き込まれる。そんな杉雄に愛想を尽かした女房のなつ枝(浜)は、杉雄と姑のぎん(正司花江)に対して驚きの行動に出るが……。
 現在77歳の左が、この作品を通じて浜に巡り会ったのは30歳の時。以来、公演回数500回を超える現在まで、浜と共に本物の喜劇の楽しさを観客に贈り続けている。「浜ちゃんとはとても相性がいいの。宝塚で磨いたセンスと間の取り方が抜群で、こういう喜劇ができる女優は多分いないでしょう。お互い舞台に立つ度に『年齢的にあと何回できるか』なんて話しているけれど、ふたりにしか出来ない芝居をこれからも続けていきたいね」と左。70代を迎えても、浜の美貌とパワーは衰えることなく、左もまた今回のダメ亭主役はじめ、時代劇から現代劇のありとあらゆる役をはまり役にする実力に陰りはない。
 「浜ちゃんの前で、僕が踊りながら服を脱ぐシーンがあるのだけれど、浜ちゃんはいつも本気で笑ってくれるから、僕もすごくやる気になっちゃうの。500回を超える上演回数を重ねれば、時にはセリフの間違えや飛ばしもあるけれど、浜ちゃんは必ずアドリブで返してくれる。すごい女優だなといつも思う」と浜を大絶賛。勿論、浜もまた左に深い信頼を寄せる。それゆえに、ふたりが醸し出す夫婦の機微はリアリティがあり、観客の心を打つのだろう。
 今回、左が恋する里子役の大空とは、かつて舞台で共演した仲のため、お互い勝手が判ってやりやすいと喜ぶ。左と大空との息の合った掛け合いにも期待。「大笑いの中にもホロリとさせる人情味たっぷりの喜劇。足立区の皆様にも是非ご観劇頂きたいと思います」と左は心待ちしている。
【日時】10月4日(土)5日(日)6日(月)全日午後2時【料金】8500円、フレンズ会員10%引、足立区民割引(在住・在勤)8000円【チケット】TEL5244・1011。