足立朝日

女性フェスティバル 被災地の新聞社次長が講演

掲載:2014年12月5日号
 女性団体連合会(乾雅栄会長)主催の「女性フェスティバル2014」が11月8日(土)・9日(日)、エル・ソフィアで開催。8日には講演会「地元紙が伝えた3・11とその後の3年8ヶ月」が開かれた。
 講師は河北新聞社(本社=宮城県仙台市)の編集局次長兼報道部長の今野俊宏氏。同新聞社は被災し紙面制作の機材が使えない中で、震災翌日にも朝刊を発行。記者の地道な取材で避難所の状況や不明者情報などを丁寧に発信し続け、被災者を支えた。
 「新聞が支援物資の一つになるとは思わなかった」。今野氏は、震災時の写真とともに生々しい体験を説明。被災地の悲惨な現状に「記者は亡霊のような顔で毎日帰ってきた」と、発行の苦労、配達員の犠牲を挙げ「販売店の方が命がけでやってくれた。そういう人たちあってこそ、新聞は出来ている。誇りに思う」と語った。
 実体験からのアドバイスも。「公助は大規模災害のときは役に立たない。ないと思うべし」。また、男性だけの避難所運営をしていたところはうまく機能しなかったといい、共助のためにも「高齢者、子ども、障害者なども見る女性の視点が必要。女性の視点を入れて、防災計画を作るべき」と説いた。
 震災から3年半。被災者の格差が固定化し、被災者同士が対立、「生き延びたことを後悔する高齢者がいる」という。被災地が抱える少子高齢化、疲弊する地域経済、崩壊する地域医療などの問題は、日本が将来直面する問題でもある。復興再生によりそれらの問題解決のモデルとして、「東北再生委員会」の提言を世界に発信していくと宣言。「東北のことを忘れていない」とのメッセージが、今の被災地にとって最もうれしいという言葉に、参加者たちは深く頷いていた。
 今回の講演には、岩手県陸前高田市「チーム麻の葉」の大和田加代子代表、原発により埼玉県加須市に避難している双葉町民の男性、被災地支援をしている茨城県鹿沼市の林美智世さんも招かれていた。双葉町の男性は講演後の挨拶で、「漫画『美味しんぼ』は事実。福島第一の処理が終わってから再稼動は考えるべき」と参加者に訴えかけた。

写真/講演する河北新聞社の今野氏=エル・ソフィアで