足立朝日

Vol.150「笑った分だけ、怖くなるVol.1」 笹部博司

掲載:2015年2月5日号
白石加代子新企画で悪女全開

 昨年12月をもって、白石加代子「百物語」が22年間の歴史を閉じた。白石に伴走し続けた演劇プロデューサーの笹部博司は、「『百物語』の現場は、最高に良いムードで、これが終わってしまって加代ちゃんが寂しそうだった。やり残した作品もあるので」と新たな企画を打ち出した。
 それは「笑った分だけ、怖くなるVol.1」――。白石と、もう一人のゲスト俳優が、「大笑いした後にゾッとする物語」を新たな発想で上演する。初演の第一ラウンドは、東野圭吾作「超税金対策殺人事件」(「超・殺人事件/推理作家の苦悩」〈新潮文庫〉より)。第二ラウンドは、小池真理子作「妻の女友達」(集英社文庫)。白石の相手を務めるのは、ミステリアスな俳優・佐野史郎だが、これだけで十分に期待できる。上演台本は笹部が手掛け、演出は小野寺修二。「小野寺さんは振付家として高名で、前から一緒に仕事をしてみたかった人。一人が本を読んでいる時に、もう一人はどうしているか、そう考えた時、彼の名前が浮かんだ」と笹部は期待を寄せる。
 笹部は、武田真治(初演)・藤原竜也(再演)「身毒丸」、麻実れい「メアリー・スチュアート」、蜷川幸雄演出「グリークス」(上演時間9時間に及ぶギリシャ劇)などの話題作を世に送り出してきた名プロデュ―サー。その発想の豊かさと着眼点の確かさに定評がある。新企画においても、さぞや白石が喜んだと思いきや、「加代ちゃんは、いつも最初は『あ、そう』と素っ気ないし、『どこが面白いの!?』と反論するけれど、餌を与えるとどこまでも食いついていって、最後にはとてつもないところにたどり着く」と笹部。佐野の起用は「テレビで佐野さんを観て『この人だ!』と思った。断られることを考えずにオファーした」というから、作品への自信と意気込みが伺える。
 初演の作品では、普通の女性の裏側に潜む悪女ぶりが全開。「どんな女性にも悪女の部分はある。俳優はいわば代弁者。俳優を通して、自分の心を解放できるのが演劇。人は皆、腕に抱えるものが重すぎて、なかなか自由になれない。ぜひ悪女に共感して、その時だけでも自分を解放してほしい」と笹部は望む。
【日時】5月11日(月)午後6時半【料金】5500円(フレンズ会員割引あり)【チケット】TEL5244・1011。