足立朝日

伊興小学校で大規模な遺跡発掘 古墳時代~江戸時代の人々の痕跡現る

掲載:2015年3月5日号
 都内でもまれな古墳時代の祭祀遺跡として知られる伊興遺跡。その南にある伊興小学校の新校舎建設予定地で、昨年10月~今年3月初旬に大規模な調査が行われ、古墳時代~江戸時代の遺跡が発掘された。2月14日(土)には、1日限定で一般に無料で公開。発掘後は埋め戻されて新校舎が建設されるため、貴重な見学の機会となった。
 場所は伊興小学校仮校舎のすぐ奥の2370㎡の敷地で、人工的に造られた深い溝や円形の穴が並んでいる様は壮観。出土したのは300年代の古墳時代~江戸時代のもので、歴史の長さは1000年以上。異なる時代に生きた人々の生活の痕跡が一気に姿を現すのも遺跡発掘の魅力だろう。
●若宮八幡神社遺跡
 伊興小は若宮八幡神社遺跡の中にあり、古墳時代の終わり頃~中世(7世紀初め~16世紀頃)に繁栄したとされている。
 伊興遺跡公園のある毛長川流域は、足立区で初めて村が作られた地域で古墳時代には半農半漁の集落があったが、最近の調査で平安時代前半(9世紀)頃には南の若宮八幡神社遺跡に中心的役割が移ったことが判明している。
●古墳時代の土器が出土
 古墳時代終期(7世紀)の土器・須恵器「ハソウ」が、完全な形で出土した。割れや欠けがない完全な形で見つかるのは珍しいそうで、足立区でも初。
 須恵器は古墳時代中期(5世紀)初めに朝鮮半島からの渡来工人によって伝わったもので、ろくろで成形し窯で焼いて作る。大阪方面では多く出土しているが、関東では少ないという。ハソウは中央の穴に竹筒を差し込んで、水差しのように使われた酒器。見つかったものは高さが13㎝ほどで、祭祀など特別な時に使われたものと推測される。
 今回の発掘では主に奈良時代(8世紀)までの土器が多いが、古墳時代初期(3世紀)と思われる土器片も出土している。
●戦国~江戸時代
 戦国時代(16世紀)頃の井戸跡も多く発見されている。現在の地面から5m下が井戸の底で、今も水が湧き出している。カワラケ(中世の土器)や砥石も出土していて、周辺の住民によって使われた可能性があるという。
 また、中世から近世にかけての巨大な溝跡が発見。江戸時代(17~18世紀頃)には伊興小を含む一帯が東隣にある実相院の寺社の敷地で、この溝が寺院をめぐっていたという説もある。記録のない寺院創建の謎が、いつか解き明かされるかもしれない。
 出土品は調査資料作成の終わる1~2年後、伊興遺跡公園で展示される予定。

写真上/土坑や井戸が発掘された伊興小新校舎建設予定地
下/完全な形で出土した7世紀の土器・須恵器「ハソウ」