足立朝日

Vol.152「おもろい女」渡辺いっけい

掲載:2015年4月5日号
骨太の人間ドラマ復活

 スピード感溢れる変化自在な話術と、音感豊かな歌声で観客を魅了した天才漫才師ミス・ワカナ。背広にアコーディオン姿で一見ボーッとしながらも、絶妙な間合いの相槌でワカナに寄り添った玉松一郎――。二人は昭和史に残る夫婦漫才師で、人気をほしいままにした。
 15歳で一郎に巡り会ったワカナが、結婚と別離を経ながら漫才師としての頂点を極め、やがて若くして命を落とすまでの波乱万丈な人生を描いた作品「おもろい女」が、ついにシアター1010に登場! かつて、森光子と芦屋雁之助コンビで舞台化されてから463回の上演を重ねたが、9年ぶりに、ワカナは藤山直美、一郎は渡辺いっけいという初コンビで待望の復活を遂げる。50年前に、森光子がワカナ、藤山寛美が一郎を演じたテレビドラマでは、当時6歳の直美が子役で出演。そして、50年後の今、直美がワカナを演じるという運命的な舞台でもある。
 直美に対して、いっけいは畏怖の念を持つ。「直美さんの舞台を拝見したが、想像以上の凄さでとても言葉では言い表せない。直美さんは本物の人!」。いっけい自身も、大学時代に当時学生劇団であった劇団☆新感線を皮切りとして、唐十郎が主宰する状況劇場に入団。その後、テレビ・映画・舞台などで活躍し、実力を培ってきたやはり変化自在の俳優である。
 「ミス・ワカナの天才性と、誰を蹴落としてもてっぺんを取りたいというバイタリティ。そこまで思って生きられる人間は少ない。でも、その代償として体を壊すのだから、ある意味で芸人の滅びの美学を感じる。相方の一郎はワカナの才能を認めて、愛ゆえに多くの我慢を重ねながらついて行った人。本当に大変だったろう。直美さんがワカナをどのように演じるかで、僕の一郎も変わる。僕の役割は何かをよく考えて、探っていきたい。僕はコメディアンに憧れを持って生きてきたので、お笑いが大好き。でも、この作品は骨太の人間ドラマ。人におもねらない生き方をご覧頂ければうれしい」。この舞台が、「おもろい女」の新たな歴史を築くことは間違いない。
【日時】5月29日(金)16時、30日(土)12時・17時、5月31日(日)12時、6月1日(月)2日(火)13時
【料金】1万1500円、足立区民(在住・在勤)1万1000円、フレンズ会員割引あり
【チケット】TEL5244・1011。
【場所】シアター1010 足立区千住3丁目92