足立朝日

出版、個展を開催した金子愛子さん  「絵手紙が私を救った!」

掲載:2016年1月5日号
 卵巣がんを患い、それと闘う中で絵手紙と出会った足立2丁目在住の女性が、「生きたい!」という魂の叫びがほとばしる詩に絵を添えた絵手紙集を出版、個展も開いて感動を呼んでいる。
 この人は、金子愛子さん(74)。金子さんは、卵巣がんが見つかるまでは、ごく普通の生活を送っていた。新潟県上越市に生まれ、高卒後上京、鉄鋼関係の会社でOLとして働いて定年を迎え、やっと手に入れた区内のマンションでの平穏な暮らしが続くはずだった。
 目の前が真っ暗になったのは、今から6年前の1月、68歳の時。区の健診で「尿に血が混じっている」と言われ、エコー検査で卵巣がんが見つかった。3月に、文京区の駒込病院で卵巣も子宮も全摘出する7時間にも及ぶ大手術だった。
 手術は成功し、リハビリに入ったが、それはそれは辛いもの。くじけそうになる自分と向き合う日々。そんな中で、気分転換に訪れた中央本町住区センターの壁に絵手紙があった。墨絵、油絵、水彩画、
書道、俳句などの中で、なぜか絵手紙に引かれた。絵手紙教室に入り、親身になって教える古地八重子先生や仲間たちと出会ったことで、金子さんの新たな人生がスタートした。
 「最初は、下手くそもいいとこで、言葉もひどかったんですよ」と金子さん。でも、「困難や苦しみを乗り越えることで人は大きくなる」の言葉通り、金子さんの絵手紙は、独自の輝きを増していった。3匹の痩せたイワシの絵に添えて「死ぬことをこわく思っていたら 自分らしく生きれない 生きることもこわくなる 自分らしく生きて 自分らしく終わる」の言葉。
 「病気に負けそうな自分に、頑張った自分に宛てて書くことで、自分自身を奮い立たせてきました」。「自分を生きている すきに生きている やりたいように 今日を 生きている」の言葉を添えた絵はゴーヤ。
 金子さんのやり方は、絵は絵で、詩(言葉)は詩で作り、どの詩がどの絵に合うかを考えて一つの絵手紙にする。書きなぐった詩は、何と大学ノートに10冊にも。
 絵の対象は、魚、野菜、果物などが多い。「季節の物を描く。それもいいもので、新鮮でないとだめ。もったいないと思わないこと」というのが、金子さんのモットーだ。
 この絵手紙のことが、絵手紙協会に伝わり、月刊「絵手紙」の取材を受け、一昨年の4月号に載った。そして「本にしよう」ととんとん拍子に話がまとまり、昨年10月「今の私は こんな私がせいいっぱい」と題した「金子愛子絵手紙集」(B5判、95頁、700円、大崎ウェストギャラリー発行)が出版された。そして、それを記念して昨年12月3日(木)~8日(火)、同ギャラリーで個展が開かれた。訪れた女性2人組みは「色使いがすごい。絵手紙を自分のものにしている!」と感嘆の言葉を吐いた。
 金子さんは「人生の後半にこんなめぐり合わせになるとは思わなかった。これからも命あり限り精一杯描き続けたい」と語った。

写真上/「今はもう絵手紙に夢中」と語る金子さん=大崎ウェストギャラリーで
下/印象的な1枚