足立朝日

千住が舞台の漫画「ホクサイと飯さえあれば」 漫画家 鈴木小波さん 千住在住

掲載:2016年6月5日号
千住の路地と建物が好き

 広々とした荒川土手、昔ながらの細い路地。千住大学(!)に通う女子大生ブンが、全力でご飯を作って全力で食べ、相棒のぬいぐるみ・ホクサイと共に友人たちと青春を送る日常を描いた自炊グルメ漫画「ホクサイと飯さえあれば」。住んでいるからこそ描ける街の息遣いが、凝縮している。
 1話完結で、毎回登場するレシピは特別なものではなく、普段作れる「おうちご飯」。「外食はあまり知らない。作るのが好き」という。意外なことに他の作品は魔法が出てくるファンタジーやアクションものが多く、「日常ものを描いてみたい」と始めた連載だ。「千住が舞台ということが、あまり浸透していなくて」と残念そうに笑う。
 千葉県出身。一人暮らしをする時に「川がある街に住みたい」と、常磐線の中から見えた荒川の土手が決め手となり、千住に住み始めて10年経つ。「背景や建物が好きなので、裏路地散策が好き。土手ののんびりした感じも好きですね」。漫画のネタは土手を歩きながら考える。「街中を歩くと、つい写真を撮っちゃうので」。未踏の路地が多く誘惑は尽きないようだ。馴染みの八百屋の看板猫を漫画に登場させたが、人間のモデルはなかなか言い出せず、まだ実現していない。
 小さい頃から絵が好きで、漫画家を目指し始めたのは20歳の頃。2年間、出版社に作品の持ち込みを続け、2002年にデビュー。その後、ディズニーの漫画も手がけるなど活躍。もう1本の連載「燐寸少女」の実写映画が公開されたばかりだ。
「毎回、超面白い漫画にしようと思っていて。楽しんでもらおうと思って。精進したいなぁ」。その思いは確実に作品から伝わる。今後の抱負は「150歳まで生きる!とりあえず死にたくないので」。最後に足立区へのメッセージを聞くと、「スーパーで野菜買うなら八百屋で買えばいいのに。個人商店で買ってほしい」。予想に反して漫画のことではなく、街への愛が飛び出した。
★「ホクサイと飯さえあれば」①~③(ヤンマガKC/講談社)