足立朝日

いつか足立区の役者たちで舞台を

　１８５㎝の高身長に落ち着いた笑顔。いかにも好青年然だが、「そう見えますか？」と含みのある笑顔をチラリと覗かせる。
　秋田生まれの千住育ち。「千住あずま保育園に入るまでに、ヤンチャすぎて２つ断られました。いたずらっ子で、人を驚かせたり笑わせたりするのが好き」。足立学園では野球部に入部するも、少年野球とのレベルの違いに３日で帰宅部に。日大理工学部航空宇宙工学科を卒業したが、専門分野の門は狭く就職を断念した。
　子どもの頃から映画好きで、芝居の道へ。両親には反対されたが、「やってみないとわからない。後で後悔するのは嫌だった」と、26歳で青年座に入団。初舞台は壺の役で、動きもセリフもない息子の晴れ舞台に、「両親は気まずそうでした」と笑う。
　これまでテレビや映画約25本、舞台約40本の作品に出演してきたが、特に印象深いのは、故蜷川幸雄演出の「オセロー」という。演出家の納得する演技ができなければ、無名の役者は即、居場所を失うのを目の当たりにした。緊張感に満ちた蜷川の厳しい稽古場を経験した意義は大きい。
　役者の仕事は正解がない。仲間が辞めていく中、３年前、桂小五郎の半生を描いた舞台の企画・上演に挑戦。プロデューサー業に奔走した結果、演じる手応えを見失った。「自分は役者に向いていないんじゃないか」。迷いながら出演した次の舞台で、新国立劇場演劇芸術監督も務める青年座所属の演出家・宮田慶子に言われた。「あんた、才能がある」と。誉められたのは初めてだった。「それまではダメ出ししか覚えていない。それで、もうちょっと続けてみようかな、と」
　その１か月後に、仲間と立ち上げた演劇集団「Ｒｏａｄ ＯＮＥ」の旗揚げ公演を千住の天空劇場で上演。背の高さを武器にした迫力ある殺陣で、青年武士の苦悩や潔さを表現した。「僕の稽古場は荒川の土手。いつか、足立区出身、在住の役者を集めて舞台を創りたい」。地元への思いは熱い。
　９月８日（木）～11日（日）に俳優座劇場で、ラブコメディ「朝食まで居たら？」に出演する。「年齢性別関係なく、笑ってあたたかい気持ちになれるハートウォーミング。ぜひ、観に来てください」。写真とはまるで別人のヒッピー役。ヤンチャの本領発揮が楽しみだ。