足立朝日

古民家からアートを発信 学生が運営する「ココノカ」

掲載:2016年9月5日号
 4つの大学が誕生したことで、千住のまちが魅力的な変化を続けている。若者による古い建物を活用した店などが増え、若い世代を惹きつけている。
 その一つ、アートスペース「ココノカ」(千住旭町36)は、銭湯に働き掛けるなど、地域に新しい芸術の風をまちに送り込んだ。


 北千住駅東口から徒歩3分の路地。漆喰壁の2階建ての古民家は、避暑地に似合いそうなしゃれたたたずまいだ。内部は天井を取り払い、柿渋を塗りこんだ木の床と柱がむき出しで、白壁と相まって落ち着いた居心地の良い空間になっている。
 オープンしたのは今年3月。築75年で数年空き家になっていたのを、家主から依頼を受けてNPO法人千住芸術村(加賀山耕一代表)が1年かけてリノベーション(改装)。地元の工務店や学生たちが中心となって再生した。
 手伝いで参加するうちに立地と建物に惚れ込んだ東京芸大2年の小林あか里さん(22)が代表となり、アートスペースとしてスタート。町名の「旭」を「九」と「日」に分けて「ココノカ(九日)」と名付け、東京芸大、多摩美術大、東京造形大、女子美術大の学生12人が運営。クラウドファンディングでエアコンを設置するなど、若者らしいアイデアと機動力で一歩一歩前進している。
 「北千住の銭湯展」を8月21日(日)~27日(土)に開催。ココノカ副代表の東京芸大2年の畑中咲輝さん(20)と女子美大2年の飯島早矢加さん(19)が企画した。
 福岡出身の畑中さんは、千住に来て初めて銭湯を体験し、「建物にキュンとした。地元のおばちゃんが話しかけてくれたり、安いスーパーを教えてくれたり」。都会らしからぬ交流の場であることに魅力を感じたという。
 西新井在住の飯島さんは、大学でアートプロデュースを学ぶ中で、アートを興味のない人や地域に持ち出す難しさを実感。千住で銭湯の廃業が続いたこともあり、「ココノカで何かできないか」との思いを込めた。
 ユニークなのは、展示だけに留まらず、地域に飛び出した試みだ。東京芸大と東京造形大学の学生たちが千住にある8軒の銭湯ののれんをデザインし、期間中、実際に銭湯の店先にかけてもらった。店主を取材し、銭湯の個性や特徴を取り入れてデザインしたのれんは、見慣れたまちの一角に新鮮な風を吹かせた。
 若い年代を呼び込めなかったなど反省点もあり、「どうすれば、もっと来てくれるか考えたい」(飯島さん)、「リベンジしたい」(畑中さん)。
 学生たちの地域へのアート発信の挑戦は、さらに魅力的なまちに変えていってくれるに違いない。
【展示・イベント募集中】
 ココノカでは学生たちの企画展示の他、ギャラリーや撮影スタジオ、ワークショップや演奏会などのイベント会場として貸し出しもしている。1日の利用料金は学生8000円、一般1万2000円。午前・午後のみの利用、1週間のギャラリー利用もある。
【問合せ】【Eメール】

写真上/「千住の銭湯展」を企画した飯島さん(左)と畑中さん=ココノカで
中/アートスペース「ココノカ」
下/学生がデザインしたのれん=タカラ湯で