足立朝日

油井香澄さん 「ブラームス国際コンクール」で1位

掲載:2016年10月5日号
 オーストリア在住のピアニスト・油井香澄さん(25)(昨年5月5日号「ピープル」欄掲載)が、「ヨハネス・ブラームス国際コンクール」で1位を獲得した。

 9月9日、オーストリア南部ケルンテン地方のペルチャッハで開かれた「ヨハネス・ブラームス国際コンクール」室内楽部門決勝で、油井香澄さんが、デュオを組んだ韓国人ヴァイオリニストのパク・スーヒョンさん(26)と共に1位の栄冠に輝いた。
 同コンクールは、ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、声楽、室内楽の6部門があり、毎年、40以上の国や地域から400人以上の演奏家がチャレンジする若手の登竜門として知られる権威あるもの。毎年、この時期に同地で開催され、今年23回目を迎えた。
 2人を優勝に導いた曲は、ブラームスがペルチャッハで作曲した「ヴァイオリンソナタ第1番」。選曲の理由は、香澄さんによると「パクさんの先生であるDora Schwarzberg氏の音源が大好きで、いつか弾きたい憧れの曲でした。パクさんも同じ思いだったので、一緒にコンクールを受けると決めた時、即決しました」。
 審査は、一次審査、セミファイナル、ファイナルの3段階で、どの部門も世界トップレベルの巨匠が審査を担当。各演奏終了後、すぐに技術点・芸術点の獲得ポイントが一般へ公開される。セミファイナル審査において、二人の演奏に満点を出した審査員もいて、香澄さんは感動で胸を熱くした。
 1位入賞の瞬間を、香澄さんは次のように語る。
「ファイナルまで進めるとは全く思っていなかったので、びっくりしました!
準備期間中、支えてくださった方々に良い結果報告ができて、とてもうれしかったです。パクさんと弾き始めてから、色々な方に『良いデュオだね』と言われましたが、入賞時もそう言っていただけたので、息の合うパートナーと巡り会えて本当に良かったと心から思います」
 香澄さんは、2001年、10歳で英国のパーセル音楽院に入学。2009年に首席で卒業後、ウィーン国立音楽大学へ進学。現在は、同大学院の室内楽科に所属し、ピアニストとして研鑽を積んでいる。今回の入賞により「次回帰国した時に、また成長した姿を皆様にご覧いただけるよう、これからも頑張ります」と決意を新たにしている。
 香澄さんの祖母は、足立区女性団体連合会元会長、全国人権擁護委員連合会元副会長などを歴任し、現在は足立区社会福祉協議会理事を務める油井久仁子さん。「ピアノが大好きで、室内楽に自分の道を見出して一人外国で頑張っている孫から吉報が届き、本当にうれしくて涙が出ました。これまでの努力が認められて、また一歩踏み出し、自分の居場所を見つけた孫の姿に安心しました。皆様に心から感謝申し上げます」。常に物事に誠心誠意全力投球する久仁子さんのDNAは、確かに香澄さんに引き継がれている。

写真上/1位を勝ち取った香澄さん(左から3人目)とパクさん、関係者(写真提供=Gunenter Jagoutz, Klagenfurt)
中/演奏を終えて万感の想いの香澄さん(左)とパクさん(写真提供=Gunenter Jagoutz, Klagenfurt)
下/1位入賞に満面の笑みを浮かべる香澄さん(右)とパクさん(写真提供=Gunenter Jagoutz, Klagenfurt)