足立朝日

Vol.170弾き語りライブ2016 岡林 信康

掲載:2016年10月5日号
集大成を楽しむ弾き語り

 1960年代のフォークソング全盛時代を牽引した岡林信康が、ロック、ニューミュージック、演歌などあらゆるジャンルの歌を経て、今、新たに弾き語りライブを行う。その心境を次のように語る。「全国各地をくまなく回るには、身軽な弾き語りが一番便利です。歌手生活の最後に各地をできる限りまわって幕を下ろしたいと思っています」
 そもそも牧師の息子である岡林が、なぜ労働歌「山谷ブルース」でデビューを飾ったのか? 岡林は父のルーツに触れる。「私の父は牧師になる前まで、若い頃は肉体労働などもしながら、30歳まで新潟の山村で農業をやっていました。私が山谷で肉体労働をし、その後山村で農業をしたのも、父のルーツを思えば極めて当然のことです。なぜ父のルーツを辿り直したのかは私には分かりません」
 1968年のデビューから、今年で48年。半世紀にわたる音楽人生の中で、「心に残る出会いはたくさんあり過ぎる」と岡林。一人挙げるとすると、「美空ひばり」であるという。「真のスーパースターの苦しみを見ました。この人とは違う歌手人生を歩みたいと決意した事が、今の生き方につながりました」と回顧する。山村生活の間、古ぼけたステレオから流れた演歌に感銘を受け、演歌風の作品「月の夜汽車」「風の流れに」が生まれた。この曲のデモテープが廻りまわって美空ひばりの耳に届き、ひばりに愛され、そのままシングル盤として発表された。その後、ひばりの後押しも受けてワンマンコンサートも実施。
 かつて、ロンドンでキング・クリムゾンのロバート・フリップに「日本人のロックを!」と言われ、日本民謡のリズムを大胆に取り入れた新たなジャンル「エンヤトット」に挑戦。そして、美空ひばりの詩に曲をつけた「麦畑のひばり」を収録した、ひばりのカバー・アルバム「レクイエム~我が心の美空ひばり」も発売。岡林にとって、幸せな挑戦の時期であった。
 岡林は語る。「流れのままにやって来ただけであり、計算し、計画を立てて歩いてきたわけではありません。どうなってゆくのか私には分かりません。歌は聞き手がその感性で自由に受けとめ味わうものです。それぞれの受け止め方で楽しんでいただければうれしいです」
【日時】11月25日(金)午後6時
【料金】6千円
【チケット】TEL5244・1011
【場所】シアター1010 足立区千住3丁目92