足立朝日

大イチョウが見守る柳原の歴史

掲載:2017年1月5日号
撮影/斎藤昇さん(77)
=柳原2丁目在住


 写真は、柳原神社。古い神社である。創建は定かではないが、「葛西誌」によると、「慶長4年(1599年)の鎮守と云」とあり、江戸時代の前期にはすでにあったのだろう。柳原村は、元禄年間に葛飾郡小谷野柳原村から分村独立しているので、それ以降に「村の鎮守」として祭られていたようだ。
 境内にあるのが、写真の大イチョウで、区の保存樹になっている。まるで神社の守り神のよう。「この大木を拝むと、心が癒されるんですよ。何かずっとここ柳原の地を見守ってくれているような気がしましてね」と語るのは、写真を撮った斎藤さん。
 自宅から約100m。境内には、第二次世界大戦の戦没者の慰霊碑もあり、毎年6月に遺族による慰霊祭が行われている。町内から160余名の戦没者を出しているというから、あの戦争のむごさがわかろうというもの。斎藤さんの父もその一人で、5年前に亡くなったお母さんは、毎年慰霊祭に参加していたそうだ。
 大晦日から新年にかけて、ここでは神社の総代さんや町内会、商店街の人たちがかがり火をたき、甘酒をふるまって1年の安泰を祈願。「村の鎮守」は、地元の人の初詣で久方の賑わいを見せ、その後は静けさの中で癒しの場となる――。
(選者・学芸員 小林基治=日本写真会同人)