足立朝日

「千住クレイジーボーイズ」出演のお笑い芸人 スマイリーキクチ さん(45)

掲載:2017年2月5日号
ばーちゃんが教えてくれた笑いの力

 芸名は伊達ではない。惜しみない笑顔とやわらかい語り口は、まるで親しい昔馴染みのように、軽やかに心の扉を開けて入ってくる。
 本木小、六中で学び、千住を遊び場に育った足立っ子は、ドラマ「千住クレイジーボーイズ」最大の功労者だ。喫茶店のマスター役で出演しているが、実は裏方としても企画段階から参加。初めての経験だったという。
 何度も関係者を連れて区内をロケハンし、マンホールの蓋で路地の行き止まりを知る方法や、ヤンチャ中坊の定番ヘアー「ニグロパンチ」の存在など、地元っ子にしかわからないディープな足立ネタを指南。時代考証ならぬ足立考証、漫才の監修、ドラマHPの「クレボー通信」執筆など、まさに八面六臂の活躍だ。
 撮影期間中、共演者やスタッフが千住の町で買い物や食事を楽しみ、馴染んでいくのを肌で感じた。「すごく足立を楽しんでくださって。後半はスタッフもキャストもみんな、幼なじみのようだった」と驚き喜ぶ。
 一方で街の変化も実感。「なくなってしまう足立区と新しい足立区の両方が写っている。1年後はもっと変わっているはず。最後の足立を残した作品かな」との言葉に、使命を果たした思いが滲む。
 小さい頃から「ばーちゃん子」。戦争や関東大震災を生き抜いた祖母の思い出は、豪快なエピソード揃いで爆笑必至。学んだことも多い。「愚痴を言う時には笑って話せ」という教えは、今も生き方にしっかり根付いている。
 かつて、事実無根の凶悪事件の犯人としてネットで誹謗中傷され、10年間闘った時、支えになったのは信じてくれる周りの人と笑う力。「戦争や地震に比べたらオレの中傷なんて大したことないやと。幸せになることが仕返しと思って笑ってた」
 この経験を記録した著書「突然、僕は殺人犯にされた」(竹書房)は大反響。ネットの怖さを伝える講演活動も行っている。被害時の対処や自分が加害者になる危険性など踏み込んだ内容で、1月には念願の足立区でも講演した。
 「区内の小中学校を1校ずつ回って講演できたらいいな。情報リテラシーの優れた区に育ってくれたらうれしい。足立区への恩返しの一つです」