足立朝日

Vol.51-ムーン・ガーデン

掲載:2007年3月5日号
 言葉では伝えきれない思いを、しなやかな指先、優雅な動き、豊かな表情で伝える役者たちが、シアター1010の舞台に登場する。サイン・ミュージカル「ムーン・ガーデン」(原作=アンデルセン「絵のない絵本」)。手話だけではなく、誰でもが解る動きで音楽を「視る」シアター・アートだ(助成=(社)朝日新聞文化助成財団など、後援=区教委、都聴覚障害連盟、(社福)トット基金など)。
  黒柳徹子の著書の印税で運営される「トット会館」(西品川)では、本番に向けての稽古が終盤を迎え活気に満ちている。
音楽を視るシアターアート
 演出は、日本ろう者劇団代表・演出家・俳優など幅広く活躍中の米内山(よないやま)明宏。演出助手は、「風の器」代表・俳優・劇作家の庄﨑隆志。「耳の聴こえないこどもの音楽ワークショップ『響きの歌』20周年記念特別公演」として上演される本作品を主催し、脚本と音楽・空間演出を担当するのは、メディア・ワークス主宰の佐藤慶子。作曲家・ピアニストとして、「水」をイメージした作品を手がけているが、手話で米内山が表現する「波」を見て意気投合。以来 20年間共に、耳の聴こえない子どもたちのためにボランティアで活動を継続。今回は、その指導側の集大成とも言える。
 米内山、庄﨑も役者として舞台に立つが、NHK「みんなの手話」講師などでお馴染みの井崎哲也の姿も。さらに、映画「アイ・ラヴ・ユー」主役などで女優として成長中の忍足(おしだり)亜希子、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー来日公演などで全編単独手話通訳を務め、注目を浴びた妹尾(せお)映美子(手話コーディネーター)らも出演する。
  安田謙一郎のチェロ、的場響子のパーカッション、佐藤のピアノと役者たちの動きのコラボレーションも見事。手話が解らなくても充分に楽しめる。子どもたちにこそ視てほしい「夢」ある作品だ。
  上演=3月28日(水)、29日(木)、4000円。15才以下2500円。区民割引あり。チケット℡5244・1011。