足立朝日

Vol.54-ミュージカル 蝶々さん 島田 歌穂

掲載:2007年5月5日号
 シアター1010館長・市川森一の原作による新作オリジナル・ミュージカル「蝶々さん」が、遂にシアター1010で上演される。
 世界に流布しているプッチーニの「マダム・バタフライ」は、異国趣味が色濃く、お蝶の姿が正しく描かれていないと常日頃から感じていた市川は、自らの手で史実に基づいた「蝶々さん」を書き上げた。明治中期、米国から長崎の教会へ赴任した実在の宣教師の妻であるコレル夫人。彼女の目を通して語られる同作品は、04年9月、ドラマ・リーディングとして島田歌穂と麻美れいにより紀尾井ホールで上演され、観劇者の心を揺さぶった。それ以来、市川と制作の砂田慎平、島田が「いずれミュージカルに」と温めてきた夢の企画が、忠の仁の台本と作詞、島健の音楽、荻田浩一の演出で実現する。
今、解き明かされる真実
 「下女として雇ってほしい」と懇願するお蝶(島田)を帰してしまったコレル夫人(剣幸)は、お蝶が丸山へ芸者に出る身であったことを知り、胸を痛める。お蝶と交流し始めたコレル夫人は、お蝶の凛とした態度や志の高さに驚く。コレル家の書生・木原(山本匠馬)は、彼女の出自を知り、運命の悪戯に苦しむ。やがて、お蝶は米海軍少尉の妻となるが、それが「長崎式結婚」であることを知らずに無邪気に喜ぶ。コレル牧師(戸井勝海)と夫人は、お蝶に真実を打ち明けられずに苦しむ。夫が祖国へ去った後、子どもを産み育てながら夫の帰りを健気に待つお蝶。待ちに待った軍艦が入港したが、お蝶を訪ねて来たのは、少尉の妻・ケイト(小野妃香里)だった。彼女から聞かされた言葉に、お蝶は「ある証明」を決意。今、解き明かされる真実に、武家の血を引く市川の思いが重なる。
 お蝶を演じる島田は、ミュージカルを中心に幅広く活躍中。87年に日本の女優として初めて英国王室主催「ザ・ロイヤル・バラエティ・パフォーマンス」に招待され、「レ・ミゼラブル」のロングラン公演に01年まで参加。出演回数は1000回を超えた実力派だ。芸術選奨文部大臣新人賞など大きな受賞歴を重ね、現在、大阪芸術大学教授を務める。島田は語る。
 「舞台の世界は厳しい。自分の軸がぶれることなく、いつも命がスクッと立つような凛とした女優でありたい。1年の半分は舞台に立っているけれど、演技者にとっては作品との出会いが全て。市川先生渾身の史実に基づいた原作によるミュージカルを、1010から世界へ発信したいという夢を持って臨みたい。1010は皆さんの宝。『ここで蝶々さんの初演を観たのよ』と、足立区の皆さんに自慢してもらえるよう精一杯努めます」
  上演期間=6月9日(土)~24日(日)。前売6000円、当日6500円、足立区民特別割引4500円(劇場窓口前売分のみ)。チケット℡5244・1011