足立朝日

足立区から元気な「ものづくり」を発信 写真集「あだち工場男子」

掲載:2017年6月5日号
 「町工場」のイメージというと、狭くて、油臭くて、ヤンキーが働いている? それは今やドラマの中の話。町工場で頑張っている若者たちの写真集「あだち工場男子」(4月28日発売)が「さわやか!」と話題を呼んでいる。


 作業に取り組む真剣な眼差し、カメラに向けた少し恥ずかしそうな目線、仲間との自然な笑顔――。
 写真集には区内26社の工場で働く29人の若者たちの、生き生きとした姿が収められている。皮製品、菓子、畳、刺繍、医療機器、医薬品、アクリル加工、プレス加工など業種も様々だ。
 写真集を企画・制作したのは、区内の印刷所「しまや出版」(宮城2‐10‐12、TEL5959・4320)社長の小早川真樹さんだ(45)。テレビなどでも相次いで紹介され、Amazonの製造加工部門で1位を獲得するなど、反響の大きさに驚いている。
 同社は、区内唯一の同人誌専門の印刷会社で、「あだちブランド」にも認定され、年間6000冊もの個人の自費出版本を製作。業界では名の知れた老舗だ。紙の種類や加工、冊数などをパックにした料金システムは初心者でもわかりやすく、10冊から手軽に作れる。
 今年創業50周年を迎えるが、本の出版は初。「自社のオリジナルを作る夢があった」と小早川さん。狭い趣味の世界である同人誌印刷は、なかなか一般に知られる機会がない。長年の技術を外に発信し、従業員20人の家族を安心させたいとの思いも込められた。
◆町工場のイメージを変えたい
 足立区の町工場は3000近くあり、大田区に次ぎ都内で2番目に多い。小早川さんは区内の工場を見学した際、それぞれの会社に特徴があり若者が頑張っているのを目の当たりにして、「日本のものづくりは、まだまだ元気だ!」と感じたという。
 町工場のほとんどは無名で昔の3K(きつい・汚い・危険)のイメージが根強く、若者の就職先として敬遠される傾向にある。本人が就職したくても、大手や有名企業に安定を期待する親が、反対することがあるそうだ。
 そこで「町工場の良さを、なんとか世間に伝えたい!」と「工場男子」を企画。理解が得られず4年越しで停滞していたところ、東京商工会議所足立支部の北川祐介さん(当時)が企画を知って「面白い!」と賛同、足立支部の事務局長を口説きトントン拍子に進んだ。
 「フォトグラファーの永井さんも足立区。思いが詰まった写真で気持ちが感じられるのが素晴らしい」。2万枚以上ある写真選びに苦戦したが、自社の女性従業員の意見も取り入れた。「単なる写真集」にはせず、巻末に各社の概要を掲載、中・高生の就職の参考になるようにわかりやすく説明した。
 購入者から「若い方がいるんですね」「さわやかですね」という感想が届く。「足立区の町工場は多種多様。悪いイメージ払拭にちょっとでも寄与できたかな」。各社の社長が喜んでくれたことが、同じものづくりの仲間としての励みにもなっている。
◆撮影の永井公作さん
 企業の映像制作などを請け負う㈱アトンス(綾瀬)を経営する永井公作さん(38)にとって、写真集はこれが初だ。
 写真や動画は10代の頃からの趣味で、技術は独学で身につけたという。永井さん自身、この撮影で町工場へのイメージが変わった。「金髪は一人もいなくて、みんなさわやかな好青年。大卒も普通にいますし、いろいろな工場があるんだなと。どこもきれいでした」
 撮影ではうつむいて作業をするモデルに苦労も。カメラ目線の写真でのポーズの指示は「元は理学療法士なので、関節をどう動かすとイメージ通りになるかわかる。その人ごとに一番いいところを生かして、かっこよく見える角度を探した」という。「仕事中の男を撮るなら任せてくれ、という自信はつきました。これに続く企画をぜひやりたい」と意欲を燃やしている。

写真上/小早川さん(右)。「製本男子」として写真集に登場している「しまや出版」従業員の松永匡司さんと=しまや出版で
下/永井さん。漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の「ジョジョ立ち」を参考にしてポーズを研究


▼「あだち工場男子」=1500円(税別)
 ネット通販のAmazonで販売中。区内の店頭販売は①駅前の本屋まこと(竹ノ塚駅前店)TEL3884・2353②スーパーブックス(竹ノ塚駅前店)TEL5831・0401③ぶっくらんど(千住2-43)TEL3881・0678④渡辺優文堂書店(千住3-43)TEL3881・2662⑤山下書店(綾瀬駅東口店) TEL5697・8208⑥くまざわ書店(イトーヨーカドー綾瀬店5F TEL5697・8411