足立朝日

隣人を知ることが大切 御船町町長 熊本地震の教訓を講演

掲載:2017年6月5日号
 熊本地震から1年が経った4月7日(金)、西新井文化ホールで熊本県御船町の藤木正幸町長による特別講演「災害対応における被災地から伝えること」が開かれた。
 区内企業が被災した子どもたちのために、御船町にランドセルを寄贈したことから実現したもの。
 藤木町長は地震発生時の様子を「直下の揺れは体が浮いて机の下に隠れることができない。地震に流されているだけ。死ぬかと思った」と語った。
 役場や警察は機能せず、命を救ったのは地域の人だったという。町長の息子も隣人によって救出された。「隣人はどの部屋に誰が寝ているか知っている。いかにコミュニティが大事か実感した。隣の人の顔を知らないと助からない」
 自主避難所が60カ所以上できたが、リーダーシップを発揮できる人がいないところは過酷だった。避難所では1日ごとに心が疲弊していき、人が全く変わってしまう。同じ人間同士が一日中、一緒にいるストレスにより、親が子を虐待する事態が起きた。
 子どもを救うために保育所の開設が必要で、子どもに物資の配布を任せることが癒しになったという。
 指定避難所はほとんど使えず、避難所のリーダーの居場所もわからなかったり、自主防災組織は多くの人と連絡が取れず機能しなかった。「3日間は自分たちで判断して生きていくしかない。その時に指示できるような人が今は少ない。リーダーを育成して欲しい。それが命、財産を守る」
 さらに藤木町長は「金があれば生活水準はどうにか戻せるが、人の心はどうか。コミュニティ再生なくして復興はない」と訴えかけた。

写真/講演する藤木町長