足立朝日

アツキヨ 扇在住

掲載:2017年3月5日号
「夢を持ち努力する大切さ」を子どもたちに

 17年前のこと、夜8時、北千住駅地下歩道側のルミネのシャッターが降りると同時に、優しい歌声が駅周辺に響き渡った。デュオ「アツキヨ」――佐々木厚・通称アツシと、中村清美・通称キヨである。
 聴覚障害をもつキヨの「歌姫になりたい」という夢を叶えた曲「キセキ」を熱唱するアツシと、サインボーカルと名づけた美しい手話で舞いながら歌うキヨ。二人はたちまち評判になり、北千住の街角にはアツキヨを取り巻く人の輪が広がった。
 やがて24時間テレビ出演も果たしたが、音楽の世界の現実は厳しく、事務所との契約満了により二人は離れ離れに。
 しかし、「キセキ」は再び訪れた。多くの苦労を分かち合った二人は再会し、ごく自然に寄り添った。そんな中、2020年に迎える東京オリンピック・パラリンピックに向けて、アツシの出身地・荒川区から「障害者理解に向けたコンサート」の依頼があり、区内の学校を回ることになった。アツシの恩師が入谷南中学校に勤務していることから縁が生まれ、昨年、足立区でも初のコンサートを開催した。
 さらに、足立区教育委員会の定野司教育長と学校指導担当課・斎藤一裕課長の理解と協力に支えられ、足立小学校、千寿小学校、保木間小学校でも「夢コンサート」を行った。足立小(写真)で実は二人は夫婦であり、一昨年夏に女児を授かったことを伝えると、児童一同、大拍手と歓声で祝福というシーンもあった。この2月には、アツキヨ応援隊の一人からの依頼で、ステラ千住保育園を訪れ、楽しさ100%の時間を園児と共有した。
 どのコンサートでも、キヨは必ず「夢を持ち、諦めずに努力を続けることの大切さ」について語りかける。愛児という守るべき宝を得た二人の歌声とサインボーカルは、さらにしなやかで力強く胸に迫るものがある。
 この夏、二人は第二子を授かる。足立区に住み、豊かな音楽活動に勤しむ二人は今、幸せである。