足立朝日

PTA有志が運営「こども食堂 いちか」 学校、地域ぐるみで見守るネットワーク

掲載:2018年4月5日号
 「こども食堂」の活動が足立区でも広がっている。飲食店による地域貢献、個人が自宅で行っているものなど様々ある中で、「こども食堂 いちか」は、小学校のPTAが、学校、開かれた学校づくり協議会と連携して運営している、全国でも珍しい活動だ。

 「いちか」があるのは、押皿谷住区センター(鹿浜8-27-15)。こども食堂のなかった鹿浜エリアで、1年前から月1回、第3か第4木曜日の夜に開かれている。
 料金は高校生までの子どもは無料、大人は300円。夏休みのランチ3回を含めてこれまでに17回実施し、徐々に利用者数が増えている。
 運営しているのは、昨年2月に設立した「いちかポケットの会」(足立区NPO活動支援センター登録団体)。会長の宮本明彦さん(48)は、鹿浜第一小のPTA会長でもある。
 5年間のPTA活動で学校と係る中、見えてきたのが朝から元気のない児童がいることだったという。前夜から何も食べていない、食事がカレーパンだけ、という子どもたちの現状を知った。
 食事が取れない子どもたちの事情は、金銭面の問題だけではない。「シングル家庭で兄弟4人を養うために夜働いている母親が、朝食を作るのは難しい」と宮本さん。区主催の子ども食堂報告会に参加し、仲間とともに立ち上げた。
 PTA本部役員有志と元役員有志が運営。名前は鹿浜第一小創立50周年記念キャラクター「いちか」からつけた。
 鹿一小の元栄養士が自然のものをなるべく生かした体に良いメニューを考案。食材は会員のネットワークを使って企業などから提供してもらい、調理はPTAや自治会長など約10人が行っている。子どもを日頃良く見ていて、以前から支援の必要性を感じていた人たちだそうだ。
◆協力の輪で広がる居場所づくり
 こども食堂の役割は、無料で食事を提供することだけではない。子どもがみんなと温かい食事を楽しみ、安心できる居場所を作ることで、孤立を防ぐことにもある。
 食堂は夕方5時から7時まで。30分間のご飯タイム以外は自由時間で、同校卒業生で鹿浜菜の花中のボランティア部が、勉強を見たり話し相手になるなど子どもたちをサポートしている。また、地域で創作活動をしている多賀もちゆきさんの協力で、自由に絵を描ける環境も作った。
 他にも、同校を卒業した中学生による学習支援「キッズドア」、地域の居場所づくりと見守り活動として、谷在家団地自治会「サロン いろり」が連携。鹿一小きっずパレット、同校同窓会、鹿浜押部子ども育成会、特養老人ホーム、地域包括支援センターなど、地域全体で支える輪が広がっている。
 運営費は区の助成金と会費、寄付で賄っているが、「基本的に赤字。今は実績を積み重ねていく時期。2年間が勝負」と宮本さん。回数を増やしたいが、住区センターは月1回しか使用できないため、「場所が必要。空き家活用できれば」という。
 こども食堂は「点」ではなく、「線」でつないでいくことで、可能性が広がる。宮本さんは「区内の子ども食堂同士でネットワークを作れば、20年、30年先を考えられる。家庭、学校、学童・放課後子ども教室の他に、5時から8時の第4の居場所として充実したい」と話している。
 子ども食堂のノウハウを知りたい人は、TEL090・3811・0618宮本さんまで。

写真上から1/「いちか」でみんな一緒に楽しい晩ご飯
2/会長の宮本さん
3/料理のベテランスタッフたち
4/栄養士が考えているバランスの取れたメニュー